2017日中友好大学生訪中団 ― 友好協会分団

公益社団法人日本中国友好協会(以下、(公社)日中友好協会)は中国政府の要請を受け、北京市人民対外友好協会(以下、北京市対友協)との協議により、8月27日から9月2日までの6泊7日、北京―成都へ「2017日中友好大学生訪中団」を派遣した。日本の大学生が中国の大学生と実際に交流することで相互理解を深め、中国の生活文化に直接触れ、より客観的に中国を理解することを目的とする。 今年は日中国交正常化45周年であることから、訪中団の枠を拡大。日本からは当協会を含めた6団体(早稲田孔子学院、大阪総領事館、亜細亜大学、少林寺拳法連盟、日中文化交流協会)が派遣する、約500名の「日中友好大学生訪中団」となった(当協会分団名は「友好協会分団」)。友好協会分団は、宇都宮徳一郎団長(当協会副会長)、山岸清子秘書長(当協会事業部長)、事務局6名、学習院大学(10名)、昭和女子大学(20名)、中央大学(10名)、東京大学(19名)、東京外国語大学(5名)、東京女子大学(9名)、山口大学(26名)の総勢107名の構成となった。6分団は各々のプログラムの他、8月29日に北京大学に集い、中国の大学生500名と共に「千人交流大会」に参加した。

(以下、友好協会分団概要)

出発前日、成田空港近くのホテルで事前研修会を行った。訪中団概要説明、各大学班長挨拶、学生代表選出等を行い、「今、日本の大学生として訪中する意義」として設けた講義で、当協会橋本逸男副会長(元上海領事)は「自分の目で見、自分の頭で考え、自分の意見を持ってほしい。ひとつの考えに凝り固まることなく、公平な視点を持つことが大切」と語った。夜の結団式では、宇都宮団長より「多くを見、多くを聞き、多くを学んできてほしい」と期待が述べられ、学生代表の依田有里佳さん(東京女子大学4年)は「大学1年の頃から日中友好にどのように関われるかを考えながら過ごしてきた。今回の訪中で出会った仲間と今後もつながり続けたい」と挨拶した。

出発当日は、午後の便で成田空港から北京へ。北京空港では北京市対友協の高双進副会長、馬恵麗部長、陳医女史の出迎えを受け、深紅の横断幕と花束で歓迎された。夜の到着だったため、一行はそのままレストランに向かい、初めての本場中国料理を味わった。

北京滞在中は、北京第二外国語学院日本語専攻の学生達が行動を共にしてくれ、万里の長城に向かうバスの中から交流が始まった。車中ではお互いの結婚観を発表し合う等、同世代共通の話題で盛り上がった。8月下旬とはいえ北京の気候はすでに秋めき、長城見学は爽快なものとなった。その日の午後は若者の起業を応援する「北京青年創業公社」を見学。意見交換の場では「日本と中国の企業1年後の現状について」「国による起業の違い」等、積極的に質問があがった。創業公社見学後は団役員と班長らは、この度の受け入れ機関である北京市対友協を表敬訪問。景俊海会長、田雁常務副会長、趙会民北京市外事弁公室主任、熊卓北京市青年連合会名誉主席、汪婉中国駐日本大使館参事官等の出迎えを受け、宇都宮団長はこの度の受け入れに対して感謝の意を述べた。その夜は宿泊ホテル内で歓迎会が行われ、田雁北京市対友協常務副会長、熊卓北京市青年連合会名誉主席、北京第二外国語学院関係者等が出席。熊卓名誉主席は「滞在中は心と体で中国を感じてほしい。若者同士の交流を通して相互理解、相互信頼の関係を築き、中日友好の未来の大きな力となってほしい」と挨拶した。宇都宮団長は「ここに参加した日本の学生が、中国の学生と交流し相互理解を深め、地方都市を回り、現在の中国の生活文化に触れることにより、客観的に今の中国を理解し、両国の青少年交流の中心となってほしい」と挨拶した。続いて両国の学生代表が檀上に上り、北京第二外国語学院の学生は「今後日本文化や日本社会についてもっと学び、将来は中日友好の懸け橋になりたい」、日本側代表依田さんは「私たち若者が日中友好の要であると感じている。そのことを意識しながら活動していきたい」と挨拶した。また田雁常務副会長は「人と人との感情は海より深いと言われている。若者の交流は中日友好の未来にとってとても大切」と乾杯の挨拶をした。双方の学生によるパフォーマンスは、日本側は剣道の型や合気道等を、中国側は中国琴の演奏等を披露するなど、楽しいひと時となった。
翌日は今回の大きな目的である「千人交流」に参加するため北京大学へ。午前中は2グループに分かれ、北京大学の経済学院(日本の経済学部に相当)、光華管理学院(日本の商学部に相当)とそれぞれ交流した。光華管理学院と交流したグループには3つのテーマ(日中の経済補完、アニメ産業の今後、中国のインターネット産業と日本企業の関わり)が用意されており、小グループに分かれ英語で意見交換をした。ほとんどのグループがアニメをテーマに取り上げ、中国の若者も日本のアニメ業界に大いに関心があることがわかり、お互いの距離がぐっと近くなったようだった。その後は大学内の賽克勒博物館や工学系の実験室等を見学し、学食で昼食を取る流れとなった。午後は日本側6分団と中国側学生全員が北京大学百周年記念講堂に集まり、駐日中国大使館主催の式典に参加。来賓として、1984年の日中青年大交流の際に中国側青年として活躍した劉延東副首相が出席し「未来は若者にある。中日友好の新たな1ページを描いてほしい」と、青年交流の意義を強調した。また、程永華駐日本中国大使は「先入観を捨て、相手の考えとの違いを理解することが必要」と、横井駐中国日本大使は「両国の若者が日中のかけ橋になるだけでなく、柔軟な発想で世界の懸け橋になってほしい」と、福田康夫元首相はビデオメッセージで「若者の交流は大切であり、日本と中国が相互理解相互信頼を深めて協力することはアジアにとっても大切」と日中の若者たちにそれぞれエールを贈った。また中国からは北京大学学長が、日本からは早稲田大学総長が大学を代表して挨拶した。最後に日中の学生代表が平和友好宣言として「交流や協力に努め、日中平和友好という偉大な事業の新たなページをつづる」と誓った。この他、双方の学生が少林寺拳法や中国舞踊を披露し盛り上げた。1000人が同じ場所で同じ時間を共有したことで、皆の思いがひとつになったひと時だった。北京での交流プログラムを終えた翌日、一行は故宮博物院見学後、北京市対友協・田雁常務副会長、馬恵麗部長、陳医女史、中国青年旅行社・徐川氏に同行いただき、空路四川省成都へ移動した。

北京を発つ前から成都は連日雨模様との天気予報だったが、馬恵麗部長は自称最強の晴女だとのことで、そのパワーもあってか連日傘いらずとなった。成都空港では向瓊花四川省人民対外友好協会秘書長に迎えられた。成都滞在は、パンダの研究所として知られるパンダ繁殖基地参観からスタートした。広い敷地に何頭ものパンダが飼育され、愉快で可愛らしい生態を目にし、学生達は夢中で写真を撮っていた。その後は、古代の水利事業の功績が見られる世界遺産・都江堰等を参観した。今回、出発の3週間前に四川省の九寨溝で大きな地震が発生した。訪問地成都からは400km以上離れた奥地だが、省都の成都を訪れることから急遽、訪中団で義捐金を募り四川省へ届けることを提案したところ、多くの学生が賛同してくれた。成都滞在2日目の晩に行われた四川省人民対外友好協会主催歓迎宴でこのことを告げると、趙平会長は「私の今までの9年間は九寨溝勤務だった。9年前の大地震の時にも日本から温かい支援を受け、防災減災について多くを学んだ。今回もこのような気持ちをいただき、九寨溝の人々を代表し感謝する」と述べ、皆この偶然に驚くこととなった。歓迎宴では妙技・変面に一同は感嘆の声をあげ、日本側学生による炭坑節披露では趙会長始め中国の方々も一緒に踊り、大変楽しい時間となった。また、中国側より全員にパンダのぬいぐるみがプレゼントされ、歓声が上がった。
成都3日目の午後は交流先である西南交通大学へ。工学系の中でも特に交通運輸工学が群を抜く大学で、先ずリニア新幹線等の実験室を見学した後、日本語専攻学生が待つキャンパスへ移動した。交流の前に王暁茹校長補佐は「本校での交流を通して、両国の学生の相互理解が深まることを期待している」と挨拶した。交流の場では、学生代表がお互いの学生生活を紹介し、小グループに分かれて歓談、その後教室を移動し、共に絞り染め体験をした。その夜は校内の学食で交流夕食会が開かれ、相互のパフォーマンス披露の後、明日に帰国を控えた日本側学生から感想が述べられた。山口大学の清水優佑さんは自己紹介を生まれて初めて使う中国語で披露した後「自分の足で歩き、五感を通じてたくさんのことを知り、遠かった中国が近くなった。帰国後は周囲の人々に中国の良さを伝えたい」と述べた。東京大学の矢吹凌一さんは感想を自らが同時通訳し「その国を知るためにはそこに行くことが大切。中国の学生にも日本に来てほしい。ここに集まった参加者が将来再び会い友情を深め、それが日中友好につながると信じている」と述べた。

中国側の「多くの交流、体験を」との計らいで、帰国便出発までの時間には、幼児達と触れ合う場が設けられていた。訪れた先は子供たちの課外活動を積極的に行っている青少年宮・青少年活動センターで、地元の子供たちと一緒に武術体験や切り紙体験等をし、笑顔で交流した。団員は積極的にプログラムに参加し、現地の学生と交流し、内容の濃い6泊7日を過ごした。特別行事参加を含む忙しいスケジュールであったが、大きく体調を崩す学生も出ず、全員が元気に帰国の途についた。実際に会って交流することの大切さをこの度も感じた7日間であった。

今回この事業にご協力いただいた、全ての方々に厚く御礼を申し上げます。

 

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