雑誌《人民中国》企業訪問レポート 岡崎葉生(2022北京大学)

先日「人民中国」雑誌社に訪問させていただきました。

初めに、王編集長から人民中国の雑誌としての歩みを創刊時から現在までを説明していただきました。時代が移り変わるにつれて求められる雑誌像も変化していくなかで、読者に喜ばれる雑誌は何かという事を突き詰めて考え、現在に至るまで試行錯誤を繰り返してきたことがよく分かりました。雑誌作りにかける熱意は、編集部の方々との意見交流の場でもひしひしと感じました。交流の場では、私たち留学生が人民中国の雑誌へ抱いた印象から、現在の中国のことで興味があることにまで様々な話題についてお話ししましたが、編集部の方々が私たちの意見にとても興味を持って聞いてくださったのが印象的でした。そういった姿勢から、若年層への訴求について真剣に取り組んでいらっしゃることを感じました。人民中国の読者層の高齢化が抱える課題の一つであるということは編集部の方からもお聞きしましたが、私は読者層だけでなく、政府機関発行の雑誌編集部で働いている方は年齢層が高めなのではないかと勝手に想像していましたが、実際に出迎えてくださった編集部の方々の中には若手の方も想像以上にいらして驚きました。また、若手の方がTwitterを始めとするSNSを活用した広報や、中国アニメ・漫画を日本語翻訳して発信しているということも知りました。訪問させていただく前は、雑誌の編集部なので仕事で取り扱うことは誌面のみだと考えていましたが、中国の現在を日本の人々に伝えるという目的のためにさまざまな方法を試していることを知れたのは新たな発見でした。私が日本でよく見ていた中国アニメの翻訳をするアカウントもこちらの編集部が運営していたと知り、知らず知らずのうちに人民中国の発信するコンテンツに触れていたのだと気づきました。

また仕事体験として、私は編集校閲の仕事を少し体験する機会もいただくことができました。雑誌の紙面の制作工程の様子を目の前で見せていただけたのは、紙の本好きとしてとてもわくわくしました。また、私たち学生が原稿の誤字や修正箇所を探してみた際は、母語の文章を読んで修正するべき箇所を見つけるというのは、思いの外難しいというのが私たちの共通した感想でした。たとえば、どこかしら違和感を感じる箇所があったとしても、この箇所が間違っているのか、それとも私の知識や語感が間違っているのか分別がつかなくなるような感覚がありました。そして日常生活の中で使われる表現や表記方法と、出版物において使われるものとは違いがあるという事を知ることができました。複雑なのは、出版物全てに統一された表記のガイドラインがあるのではなく、たとえば「人民中国」には「人民中国」の決められた基準があり、それに準じた記事づくりがされているようでした。

また、人民中国のツイッターに投稿するツイート内容を考えるという体験もさせていただきました。普段、個人のSNSで発信をするときとは違い、雑誌の公式アカウントとして発信する際には画像選びから情報の翻訳、文章の整理などに気を使い、ツイッターユーザーに向けた発信内容を考えていらっしゃることが分かりました。

創刊以来の人民中国の変遷を知ることで同時に中国社会と日本社会の変遷についても追うことができたと感じています。現在世界中で、紙のメディアの存在意義が問い直されています。さまざまな転換期を乗り越えてきた雑誌『人民中国』が、今後どのような発展を遂げるのか一読者としてとても楽しみにしています。また、私と同じ中国に留学中の留学生たちと交流し、どういった目線で中国を見ているかということを聞くことができたのもとても嬉しかったです。編集部の方々もかつて日本に留学されていた方が多くいらして、留学への多様な考えや経験を聞くことができ、私も留学について考えるきっかけをいただきました。この度は人民中国雑誌社へ訪問する機会をいただきありがとうございました。いろんなことを吸収することができた1日でした。