「この一年で感じたこと、今思うこと。」 染谷圭秀(北京第二外国語学院)

これから留学を控えている方は、現地への渡航の目処が立たず、前例のごく少ないオンライン留学を目前にしてきっと不安を抱いていることだと思います。僕もそうでした。そんな方に向けて最後に、コロナ禍でのオンライン留学という、ある意味とても貴重な経験のなかで感じたこと、今思うことを共有したいと思います。辛い日もあるだろうけど、得るものも大きいということを少しでも感じていただけたら幸いです。

今になってこの一年を振り返ってみると、オンライン留学も悪くなかったなと感じています。もちろん、中国に行けずに残念だったという思いに変わりはありません。もうこんな経験はもうしたくないというのが正直な思いです。ですが今思うのは、この経験は僕にとって必要なものだったということです。

中国に行きたいという思いが強かった分、中国に行けないという現実はとても大きな困難に感じました。今までこんなに大きな壁に直面したことのない人生でしたので、これを乗り越えるのには少々時間がかかってしまいました。
冷静になって世界を見渡してみれば、自分の置かれている状況はとても恵まれていて、ちっぽけな困難だと言うことは理解できるのです。それでも、中国に行けないという現実を受け入れるのは容易なことではありませんでした。新型コロナウイルスというあまりにも強大な敵に対して、僕個人では当然為す術もなく、感情をどう処理したらいいのかわかりませんでした。どうしても、“なんで自分が”という気持ちに支配されてしまいます。相手は目に見えないウイルスですから、怒りのぶつけようもありません。
こういった負の感情は考えれば考えるほど悪化していきました。そして、学習に集中できない自分に苛立つという悪循環に陥ってしまいました。

ですが、こういった状況や感情にもだんだんと耐性がついてくるもので、次第に向き合えるようになっていきました。そして、学んだことは、困難にぶつかったときは、見方を変えてみろということ。そして、すでに起こってしまったこと、どうにもならないことで悩み、落ち込んでいる時間ほど無駄なことはないということです。

僕は今までに大きな挫折をした経験もなく、特別大きな困難に直面したこともなかったので、今回の試練は乗り越えるのに時間がかかってしまいました。ですが、激しいトレーニングを重ねながら筋肉が成長するように、辛い現実と向き合いながらやり切ったこの一年で精神的にかなりタフになったと感じていて、今ではたいていの困難にはどっしりと構えて立ち向かっていけるような気がしています。
コロナ禍でのオンライン留学だったからこそ得ることのできたものを具体的にいえば、為す術もない現実への向き合い方や、その中でのモチベーションの保ち方などです。

コロナに翻弄され、現地での留学が叶わなかった人は皆大きな失望を感じているはずです。こんな時、落ち込んでばかりいられないというのは誰でも理解していると思います。しかし、期待が大きければ大きいほど落胆も大きく、前向きに物事を考えることができない時もあります。だから、いつでもポジティブでいようと無理をせずに、ネガティブな感情に少しずつでも向き合い続けることが大切です。こうすれば、最後までやりきって、振り返った時にはきっと大きな成長を実感できるはずです。
なので、現在のような困難な状況で留学を控える皆さん、最後までどうか肩肘張りすぎずに頑張ってください。