「留学する前のイメージと実際に留学してみて気づいたこと」根間 うらら(復旦大学)

留学前、私は中国に対していくつかの固定観念を持っていました。例えば、「中国料理には辛い物が多い」、「いろんなものが統一されている」「人が多い」といったような大雑把な感想ばかりです。また、中国語という言語においても、中国は大部分が漢民族によって構成されているため、統一された普通語が広く話されているものだと考えていました。特に上海は大規模な都市であるため、東京のように普通語が一般的に話されていると思っていました。しかし、実際に上海に来てみると予想に反して、辛い料理が少なかったり、上海語という普通語とはまた違った言語が街では話されていたりと、驚くことが多々ありました。こうした私がイメージしていた中国と違っていたことについて、二つ紹介したいと思います。

 

辛くない中国料理

中国に来る前の私は、中国料理は辛い物が主流であるというイメージを持っていました。例えば「麻辣湯」や「麻婆豆腐」といった辛い料理が有名なので、辛い物が苦手な私にとって、食生活が合うかどうかが一番の心配でした。最悪の場合、マクドナルドを一年間食べて過ごすことも考えました。しかし、実際に生活を始めると予想を大きく外れていました。大学の食堂のメニューは、中国料理のほかにタイ料理や韓国料理、日本料理もありますし、中国料理も「西红柿炒鸡蛋」というトマトを卵で炒めた甘い料理などもあって安心しました。「西红柿炒鸡蛋」は中国では一般的な家庭料理らしく、中国人の友人は母親が良く作ってくれたと言っていました。また、上海料理は小籠包や海鮮物といった、茹でたり蒸したりしたものが多く、素材の味を全面に出した辛くない味付けの料理が主流でした。辛い中国料理は大陸の西南部辺り発祥の四川料理に多く見られるもので、すべての中国料理が辛いわけではないということを知りました。有名料理が辛いものであったばかりに、無意識に中国の料理は辛い味付けが好まれているのかもしれないと考えてしまっていました。

 

普通語と上海語

もともと私は、方言というものは主に農村部に存在し、都会では標準語が一般的に使われていると考えていました。そのため、中国でも地域によって方言が存在することは認識していましたが、上海のような都市では、普通語が使われていると思っていました。しかし、実際には現地の人同士は上海語を使って話をしており、日本で普通語の勉強しかしていなかった私は全く聞き取ることができませんでした。ある日バスに乗っていた時、一人のご婦人が私に声をかけてきたことがあり、ジェスチャーなどから天気の話をしているように感じたのですが、天気に関する単語が出てきたようには思えないくらい、全く聞き取ることができませんでした。いくら上海語といっても、中国語であることに変わりはないはずなので、聞き取りも問題なくできそうだと思いあがっていたことを反省しました。単なるイントネーションの違いではなく、単語自体が違うように思えます。普通語が主流の大学内と上海語が主流の大学外ではまるで国が違うように感じています。

また、中国は56の民族によって構成される多民族国家であるため、中国語の方言の違いは民族によるものだとも考えていました。そのため上海は漢民族が多いだろうと予想し、統一された普通語を使っているとばかり思っていたのです。しかし、思い返せば日本でも、東京と大阪といった都市間でも標準語と関西弁のような小さな言語の違いがあることに気づきました。都会だから標準語、地方だから方言、という考え方は私の認識が偏っていたと気づき反省しています。

こうした、留学前のイメージと実際の体験を通じて、中国は私が思っていた以上に地域ごとに独自の文化が色濃く存在しており、同じ国でありながら別の地域にいくだけでまるで違う国に来たような感覚が味わえる、多種多様で魅力的な国だと感じました。

 

大学の食堂の西红柿炒鸡蛋というトマトと卵の炒め物の写真(右上)

上海の代表的な軽食である小籠包の写真