中国・上海に留学し、私の中国に対する見方は大きく変化しました。同時に、急速な発展を遂げる都市部と広がる地域間格差という、中国の多面性を深く理解する機会にもなりました。上海は中国における最も発展した都市の一つであり、そのデジタル化の進展は、キャッシュレス決済の普及において日本やアメリカを凌駕しています。かつて私が持っていた「中国は発展途上国」という固定観念は、現代的で洗練された上海の姿によって完全に覆されました。
上海の中心部では、歴史的建造物と近未来的な高層ビルが調和する独特の景観が広がっており、街の至る所に環境対策が施されています。特に、租界時代の名残を感じさせるヨーロッパ風の建物や、最新技術が融合したインフラは、訪れる者に深い印象を与えます。また、観光ビザが撤廃されたことで、日本からも中国を訪れる敷居が低くなっています。私自身、この文章を読んでいる方々にもぜひ上海を訪れ、古代と現代、さらには未来が交錯するこの街の魅力を体験してほしいと強く感じています。
一方で、上海に住んでいるからこそ気づいた地方都市との格差は、私にとって大きな驚きでもありました。例えば、青海省の省都・西寧を訪れた際、上海との間にある経済的・社会的な違いは、想像を超えるものでした。公衆衛生や交通網、物価といった基本的な生活環境の違いが顕著であり、中国の急速な経済成長がもたらした恩恵が内陸部まで均等に届いていない現状を目の当たりにしました。
これに対して、日本の地方都市と大都市間の格差は、中国と比較するとはるかに小さいと言えます。私は長野市という地方出身ですが、地域間の賃金格差や教育環境の違いがそれほど極端ではなく、地方にも一定の文化水準が保たれています。さらに、インフラの充実度においても、日本は世界的に見ても高い水準にあります。しかし、これは同時に、少子高齢化や都市集中といった新たな課題を抱えている日本にとって、未来への示唆を含んでいると考えています。
また、地方の格差が表面的な「不足」だけではなく、文化的な多様性という「豊かさ」を内包していることも見逃してはなりません。西寧で出会った人々や風景は、沿海部の近代化とは異なる中国の伝統文化を色濃く残しており、青海湖やタール寺といった地域特有の魅力が、地域の誇りとして強く根付いていました。こうした多様性をどう尊重し、発展と調和させていくかは、中国だけでなく日本にも共通する課題です。
留学を通じて得た最大の学びは、「実際にその地を訪れ、現地の人々と交流することで、固定観念が崩れ、新たな視点が生まれる」ということです。メディアや書籍では得られない体験を通じ、中国の急速な発展の光と影、その多様性と矛盾を肌で感じることができました。そして、日中間に存在する共通の課題や互いの強みを理解することで、両国がどのように協力し合い、共に発展していけるのかを模索する必要性を強く感じています。
私はこれからもこの経験を活かし、日本と中国の架け橋となるような活動を続けていきたいと思います。そして、文化や経済の側面だけでなく、人と人との相互理解を深めることで、日中友好の新しい形を創り出す一助となりたいと考えています。