北京に留学して気付いたことは、人が大阪と比べてあり得ないほど多いということである。留学する前に人の多さは想像できていたが、想像以上だった。多くの日本人が北京といえば毛沢東の肖像画が掲げられている天安門広場の映像を思い起こすのではないだろうか。北京語言大学は海淀区にあり、天安門広場の北西に位置する。ここは大学がひしめき合っており、数百メートル歩けば、異なるの大学の門が横並びになっているのが目に入る。近くのショッピングセンターにいけば、多くの大学生らしき人がミルクティー片手に買い物をしている。12月といえばクリスマスの時期にもかかわらず、多くのお店では春節の催しを開催しており、赤色の賞品が店頭に並んでいた。クリスマスも春節も同じ赤色を使うから特に違和感はなかったが、日本と比べてクリスマスの重要度は低い気がした。
個人的には中国の広告に興味があり、日本にいた時にはインターネットで見ていた。留学してみて気づいたことは、想像以上に広告がいたるところに張り巡らされていることだ。地下鉄やバスなどの公共交通機関はもとより、大学の食堂にあるテーブルや公共トイレにまで広告がある。なにより中国に来て驚いたのは政府の広告、プロパガンダの数の多さである。その種類も多種多様であり決して共産党のカラーである赤色ばかりではない。北京や天津市内では緑色を基調としたプロパガンダを目にした。その文言は「環境を守ろう」や「ごみの分別を行いましょう」などであった。もちろん社会主義核心価値観である「富強・民主・文明・和諧・自由・平等・公正・法治・愛国・敬業・誠信・友善」の看板が街角に置かれているのは当たり前である。9月の頃には見たこともないものばかりで新鮮味がありいちいち確認して感嘆していたが、12月にはもうすでに広告があるこの街並みに体が馴染んでいた。特に少数民族がいる地域ではまた種類の違うものあるらしく、それを見てみたいという願望はある。
たった3か月ではあるが多くの発見があった。トイレが本当に汚いことなど既に多くの人が体験したものはさておき、特に感じているのは中国人の多くは他人の目を気にしない人が多いということである。日本よりも丈の短いスカートやカラフルな服な人が多く、自分に自信があって他人に見せつけんといわんばかりの姿勢が感じられた。次に恋人の手のつなぎ方は日本のいわゆる「恋人つなぎ」と言われているものではなく、ただ普通の手をつなぐ人が多いことである。また手をつながず歩いたり、巻き付くよう抱きつきながら歩いていたり多種多様であった。スキンシップも人前で堂々と行うカップルが多く、それも日本とは違う点であると感じる。日本ではラブホテルというものが存在するが、中国にはそのような営業形態のホテルは見たことがない。普通のホテルが2、3時間の時間制限付きのプランを用意しているのはよく見かける。これはただ日本のラブホテルのような使い方ではなく、夜行列車などで深夜に目的地へ着いた旅行客が休憩するために設けているプランだと思われる。中国の国内旅行をする際には夜の列車や飛行機が安いので旅費を抑えたい人に薦めたい。
最後に最も大きな発見は自分の性格を見つめ直すことができたことである。自分が不満を普段から言うことなく溜めに貯めた結果、仲良いグループのみんなと遊びに行ったときに怒りが爆発してその日1日を台無しにしたことがあった。その日に怒ったことはとても些細なことでまるで子供のようであったと今では思う。それから心を入れ替えているが、イライラすることは時々ある。その都度自分が怒っていることに正当性があるのかなどじっくり考えることが重要だと学んだ。留学という特殊な環境だったからこそ気づけたことが多いと常に感じている。これからもきっと様々な事に気づくだろう。