「語るに尽きない11月」宇都宮 遼馬(北京大学)

中国政府奨学金で北京大学に留学している宇都宮遼馬です。この11月は間違いなく一番大変な月でした。ですが新しい出会いや季節の移ろいを発見できた一月でもあります。

まず今月の最も印象的な出来事といえば期中考试(中間テスト)でしょう。日本の大学にいたころに比べ、より一層真剣に取り組んだと思います。自分は对外汉语教育学院に所属しており、その試験は日本の大学に学部生をしていたころのものとは全く違うものでした。具体的には筆記試験と口頭での試験の二つに分かれていることでした。筆記試験は選択形式と記述形式のもので構成され、そこまで特殊な印象はありませんでした。口頭での試験では、六つの論題が提示され入室後に自分が話すテーマを指定されるというものでした。三分ほどを目安にする試験のため、内容をそれぞれ準備し暗記するというのは自分にとって現実的ではなく、その場で自分の使える言葉で少しずつ内容を伝えるというのが試験ではありつつとても勉強になったと思います。

 

 

とはいえ、準備なく試験に臨めるほどの度胸はなく、それぞれについて、自分が使える範囲の語彙で話す内容をまとめ準備しました。結果的にはそれぞれ現時点では合格ということで、だんだん授業での学び方や単語の使い方が身についてきたと感じます。まだ聞き取りが難しいですが、この状況で勉強できる方法を見つけるということはきっとこれから先役に立つ経験になると思います。試験後にはクラスメイトと、それぞれの苦労をねぎらう会をおこない、時間がたちこの険しい北京大学对外汉语の辛苦を共にしている同学们とも仲良くなってきました。母語も生まれ育ちも違う私たちが、中国語の学習という一転で結びつきこうしてともに啤酒を飲めるというのはとても不思議なことだと感じたのをおぼろげながら覚えています。それぞれの人となりや趣味のことなど、いろいろ話し合うことができ、より結束が強まったと感じます。

試験が終わると、以前日中友好協会の大学生訪中団で、ともに山東省を訪れた友人が北京に来るということで、山東省の次にはまさかの北京で再会することができました。普段一人であまり行かないような什刹海と呼ばれる繁華街や北京の中心部などを訪れ、羊肉の鍋に舌鼓を打ち、近況を話し合いました。環境の全く違う学生同士で中国を訪れる訪中団事業に参加した者同士ならではの話や、それとはまったく違う進路や大学の話など様々なことを話し、とても印象深い思い出になりました。この時中国のビールに加えて白酒というお酒を飲んだのですが、これが本当に強力でした。注文の仕方を間違えてしまい一本を二人で分けるはずが、一人一本になってしまい、飲み切るのが大変でした。この再会を契機に、訪中団で得た友人ともまた会いたいという気持ちがとても大きくなりました。

 

 

そして今月、個人的にとても大きい出来事だったのが吹奏楽団への参加です。自分は中学生まで部活動で吹奏楽部に所属し、それ以来音楽とはあまり縁のない生活を送ってきました。しかしこちらで知り合った方に北京に住む日本人で構成された楽団があると教えていただき思い切って参加してみようと思いました。約七年ぶりに楽器を練習したのですが、お世辞にもうまいとは言えなかった当時と比べてさらになまった演奏の腕はそうやすやすと戻りそうにありません。しかし、授業でそのことを話すと老师が「ぜひ教室で少し吹いてほしい」とおっしゃられ、同学们の前で演奏する機会をいただきました。自分はチューバという楽器を演奏するのですが、楽団の楽器の都合上こちらで楽器を探すことになりました。以前使っていた自分は以前ドイツと日本の楽器をそれぞ使わせていただきましたが、やはり大きい楽器ということで値段も高く、こちらで探す時も「中古でいいのがあれば…」と思い探していました。しかし、楽団の方に紹介していただいた楽器店でとても気前のいい店主が見繕ってくれた楽器は日本やドイツの同じ種類の楽器と比べ約十分の一の値段でした。しかも新品で。自分は最初「きっと桁を間違えたのだろう」「違う単位なのかな」「こっちの中古の楽器の値段だろうか」と心配になり何回も確認しましたが、中国のモノづくりの力強さを感じる出来事でした。もちろん100点満点素晴らしい楽器かどうかは、自分の演奏がなまりすぎてわかりませんが、現時点では十分満足しています。またその楽団に、同じく北京大学の日本人の学生の方もおり、こうして学外のコミュニティに参加することで結果的に大学内の知り合いや話題ができとても良かったと思います。今は来月に行われるクリスマスコンサートに向けて練習中で、参加が遅れた事、演奏のリハビリも相まって練習はなかなか大変ですが、少しでもいい演奏ができればと思い励んでいます。

 

 

11月以降、北京の冬が少しずつ顔を出し始め、夜は零下の気温になることも珍しくなくなりました。こちらの冬は風が強く、天気アプリによれば体感気温はさらに八度前後低いことが多いです。そして11月末ついに初雪が降りました。クラスメイトの中には雪を初めてみるという人もいました。夜11時宿舎前の広場はにわかに活気づき、示し合わせたように多くの学生でにぎわいました。自分はこちらでノースフェイスのジャケットを買い、ヒートテックにパーカーにジャケットを着てもなお、寒くて仕方なかった一方、半袖半ズボンで雪を触る人もおり信じられない気持ちになりました。自分は一年間の留学予定ですが、周りには半年で帰る学生も少なからずおり、写真を撮ったり一緒に食事をしたりするたびに少し寂しいような気持ちになることがあります。期中考试が終わり、息つく間もなく授業に明け暮れる日々ですが、生活の楽しみは不少で、きっとまたすぐ試験が来るぞ!と思いつつ実りのある生活を送れていると思います。宿舎の窓から望む、初雪でにぎわう広場の光景はなぜだかとても深く印象に残っています。