「留学中に経験した面白い、変わった体験」石橋 肇子(北京師範大学)

今月のレポートには、留学中に経験した面白い体験として、中国の火について書きたいと思います。

 

中国国内を旅行する際には、火(列車)を利用することが多くあります。火は、快適で高速な高(日本の新幹線に相当)に比べて、その分安価なものの、時間がかかり、また、座席の質なども劣ります。火の中でも、停車駅の数などによって、所要時間や料金は様々です。火の座席には、硬座,座,硬卧,卧の4種類があり、硬座、座は座席で、硬卧、卧は寝台です。硬は文字通り座席の硬さを示しており、乗り心地はやはり硬よりが良く、他にも、狭さや充電場所の有無などにも違いがあります。私は今までに硬座,硬卧,卧に乗ったことがあります。

 

中国に来てから1ヶ月が経つ9月末から10月初旬に、国庆节の大型連休を使ってウルムチ、敦煌、蘭州を回る大横断をしたのですが、当時、火の座席がどのようなものかを調べることもなく、最安の手段を選択し、全行程を硬座で移動しました。最長記録は北京からウルムチの39時間硬座です。350元ほどで行けました。

 

その後別の旅行の際に硬卧を経験しましたが、やはり、ベッドは格別です。差額以上の快適さを感じました。そしてさらにその後、卧に乗った際には国庆节に1週間硬座に乗り続けたことが信じられなくなりました。本当に広くて寝心地が良かったです。

 

このように書くと、長時間移動に硬座は辛そう、と思われるかもしれませんが、硬座には硬座独特の魅力があります。それは、様々な出会いがあるということです。勿論、他の座席でもありますが、硬座はそれらに勝ると思います。硬座では向かい合わせの4人席や充電場所に集まった人々の間で自然と会話が生まれます。たまたま近くにいて、長時間移動を共にするというだけで、世代も出身も全く違う、普段関わることのない属性の人同士が交わります。車内で出会った人同士が他愛ない話で盛り上がり、降りる駅に着いたら別れる、というのは、究極の一期一会だと思います。実際、39時間乗ったウルムチまでの火内でも、本当に多くの人との交流がありました。出稼ぎ先の北京から故郷に帰省する私よりも若い男の人、中国の漢詩について教えてくれた人、私が快適に寝られるようにと空いている席を見つけて呼んでくれた人、朝ごはんをくれた人など、忘れられない優しさや出会いが沢山ありました。火の何よりもの魅力は安さではなく、ここに詰まっていると私は思います。

珲春の中国、北朝鮮、ロシアの三国国境

新学期開始前最後の週末を利用して、北京から北に上がり、今春というところに来ています。春で中国、北朝鮮、ロシアの三国国境を訪れ、その後は图们,延吉を回って帰る予定です。火での出会いを大切に思う気持ちと同じように、旅先での人との出会いや交流も楽しみながら過ごしていきたいと思います。