「中国人との交流(出会い方、交流の仕方)」千田 健太郎(北京語言大学)

 春节快乐!このレポートを書いているのは1月29日、ちょうど旧正月になります。春节の今朝は北京中心部を回ってきました。王府井の歩行街は大変賑わってましたが、一方で大学内は殆どの学生が一時帰国・帰省しており閑散としています。私はこの冬は帰国せず国内旅行に充てる予定で、明後日から上海・杭州・南京・湖北・成都・重慶を2週間ほどかけて回ってくる予定です。(日程の都合で最も混雑する時期になってしまいました、、、)

 さて、今月は中国人との交流について書かせていただきます。他の方も書かれているように、語学留学の授業は外国人だけで構成されており、先生以外の中国人と交流できる機会は殆どありません。現地学生との交流を設けるには、自ら動くしかありません。この五か月の経験で私が感じた交流の秘訣は、責任の伴う交流こそ取り組んでみるべきというものです。

 私は縁あって、昨年秋から日本語学科の予科生(来年日本の大学を受験する為に日本語を学ぶ1年間だけの過程。現地学生だが、学部生とは異なり学位も付かない)に日本留学試験(EJU)の内容を教える大学内のアルバイトをさせていただいてます。教える内容はEJUの総合科目というもので、地理・歴史・倫理・政経など日本の高校生が履修する内容とほぼ同じものです。とはいえ教材は全て日本語で書かれており、1年間で日本語の勉強と並行しながら学ぶのは相当ハードルが高いものだと思います。私は30名ほどの学生を担当させていただいており、講義形式で教室に30名の学生が座る中、前で講義を行います。大学側からは極力日本語を使うようにと依頼されていましたが、日本語の水準も学生によってまちまちな為、半々で中国語も使うように意識しています。加えて全ての内容を中国語訳したパワーポイントも作成し、投影しながら毎週100分間の講義を行っています。

しかしながら、日本での個別塾のバイト経験こそあれ、30名もの集団授業は私も初めてです。ましてこちらも中国語を勉強中の身であり、大勢の学生を前に言葉が飛んでしまう事もありました。始めたばかりの時期は学生たちの反応が薄かったですが、最近では半分以上の学生が興味深く反応してくれるようになってきていると感じます。立場上私は老师という扱いになってますが、学生の皆さんから学ばせていただいてる事も非常に多いです。社会保障について説明していた際に日本の救急車が無料だと伝えると大声を出して驚き、誰でも自由に政党を結成できる事に衝撃を受けているなど、社会そのものの違いを感じる場面も多々ありました。こちらの語学力も着実に伸びていると感じます。毎回授業前に教授にパワーポイントの中国語を添削してもらっていますが、回を重ねるごとに自然な訳になっていると誉めていただいた事は嬉しかったです。

また、多くの学生たちが私に関心を向けてくれるようになった事も中国語を学ぶ活力になっています。冒頭で湖北省を訪れると書きましたが、なんと湖北出身の学生が1週間実家に招いてくれたのです。親族が集う大切な時期に外国人を招き歓迎するというのは、非常に珍しい事だと思います。大変ありがたいお話しです。こうした縁にも恵まれるのが留学の魅力だと思います。

このアルバイトの話を最初に伺った時は重圧もあり引き受けるかどうか迷いましたが、結果的にこうした貴重な出会い・経験に恵まれ、正解だったと感じています。現地企業でインターンをする学生も、多くはないですが一定数います。金銭が発生し責任の伴う交流は重荷でもありますが、その分得られるものは非常に大きいです。私の担当カリキュラムはあと二ヵ月ですが、最後まで学生達の要望に応えられるように授業を続けていきたいと思います。

EJU「総合科目」のテキスト。日本の高校生の内容とほぼ同じ

毎回自作しているPPT。事前に中国語のカンペを書き込んでおく

授業前の教室。朝一の授業なので生徒はまだ来ていない

教室に向かう途中。既に3ヶ月ほどやっているが、毎回多少緊張する

 

春節初日、賑わいを見せる北京の前門大街