「中国のイメージ、ビフォーアフター」齋藤 あおい(華東理工大学)

中国のイメージ before

12月のテーマは、「留学する前のイメージと実際に留学してみて気づいたこと」である。実のところ私には、巷でよく聞かれるような、中国を怖いと思っていたというエピソードがない。初めて中国を訪れたのはもう10年前のことになる。私が中国に興味をもつようになったきっかけは、母の友人だった。

彼女は上海万博の頃、夫の仕事の都合で上海に帯同した。専業主婦で、物静かな印象の方であったが、戻ってくる頃にはなぜだか元気いっぱいになっていた。そして上海生活を恋しがるばかりに、ついには単独で上海に戻って周囲を唖然とさせた。田舎住みの日本人女性にパワーを吹き込む街・上海。俄然興味がわいた。いつかは訪れねばなるまいと心に決めた。

浦東の景色

中国のイメージ after

2010年代、学部進学してから、私は何度か上海を訪れることができた。教授たちは今の上海なんかつまんないよと口々に言っていたが、古きと新しきとが混在する街に私はじゅうぶん感動していた。プラタナスの並木が美しい旧租界地でおじさんが道に唾を吐いても、もののあわれを感じていた。

いち早く海外へと開いていった都市であるからだろうか、上海出身の方は外国人に親切に対応することに誇りをもっている気がする。そのホスピタリティの精神のおかげで、のびのびと交流させてもらってきた。

寮の優しい阿姨さんにもらったプレゼント

そうやって人づてに出会ったバチバチのギャルのお姉さんが、私の研究の女神である。彼女は結婚出産を経ながらも、家族や伝統とのはざまですり合わせをしながら、上海本地人ギャルとしての道を歩んでいる。姐さん(そう呼んでいる)はジェンダー研究の畑の人ではないが、何気ない、でもパワーのある言葉のひとつひとつに励まされる。きっと母の友人も上海生活の中で力付けられる出会いがあったのだろうと思う。

姐さんとプレゼント交換した際にもらったリーナベルちゃん

楽しむあまりに忘れてしまってはならないのが、日中の歴史だ。今、分かりやすい嫌悪感を向けられることはほとんどないが、先日旅行先で若い人と話していて、「中国語うまいけど抗日ドラマみたいだね」と言われたときはドキッとした。私に怒りをぶつけたいのか、他の優しい人が私の下手な中国語を褒めてくれるのに釘を刺したくなったのか、とにかく感情が読めなかった。でも実際のところ彼は悪気ゼロだったのである。その後みんなで元気に山を登った。このエピソードから伝えたいのは、若い人は昔のことを気にせず交流しているということではなく、こういった形で歴史は続いているということである。学びつつ、付き合い続けていくほかない。

最後に、アフターコロナの中国は、昨年まであれだけ厳しくロックダウンしていたのが信じられないほどに、病気に緩くなっていると感じる。検査とか隔離といった概念がなくなって、昨年12月にインフルエンザが流行っていた時、大学の保健管理センターでは無料で風邪薬が配布されるだけだった。

ぽんと置かれた風邪薬

それがここ数年で一番のビフォーアフターかもしれない。私も風邪かよくわからない症状で一週間寝込んだので、皆様どうか気を付けてほしい。