大学生活
私は博士課程の学生であり、そろそろ博論に取り掛からないとまずい身である。毎日の授業はなく、お世話になっている先生のゼミだけ参加して、そのほかは論文を書いたり、資料調査やフィールドワークをしたりしている。参考になるか分からないが、日々どのように過ごしているのか書いてみたい。
・寮
華東理工大学の留学生寮は、キャンパス内の15階建ての建物だ。すべて単人間(1人部屋)でバストイレ付きなので、ひとりの時間が絶対ほしい人にはうってつけだと思う。
寮にはインターネット完備のため、朝起きてからまったく外に出ず作業をすることができてしまう。座りっぱなしはよくないので、食堂や淘宝(タオバオ)で買った荷物の受け取りセンターに行くときに、ちょこちょこと身体を動かすようにしている。
・果物屋
中国の大学には、果物屋があるのが良いと思う。春先は、本科生らしき男の子がさくらんぼを買ってその場で友達に分けているシーンを目撃し、なんだか新鮮に感じた。中国は果物との距離が近い気がする。それは値段が安いことも関係しているとは思うが、果物は日々の楽しみであるだけでなく、体調管理の手段として根付いている。先日、泰山に登ったときは、山道に数えきれないほどの果物屋さんがあって、スイカやメロン、きゅうりを食べることをすすめられた。そして最近は、秋は肺を潤すのに良いからよく食べろと寮の阿姨に言われている。中医学がベースとなっている知識を、こちらの人はカジュアルな感覚として持っていて、食材の持つパワーを味方につけている。
これは余談だが、夏に月嫂(産後ケアを専門とした家事労働者)の研修施設でフィールドワークをしたときは、日本のお土産で人気の抹茶キットカットよりも、こちらで買ったスイカを切って配った方が、格段に評判がよかった。
休日
冒頭で書いたような生活を送っているので、平日と休みの境目がどうにもはっきりしない。ずっと寮の部屋にいて誰とも話さずパソコン作業だけで一日を終えてしまったとき、あれだけ焦がれた上海にいるというのに自分は何をしているのだろうと、とても悲しくなる。
・お風呂
最近はしめきりが近いこともあって、遠出ができていない。そこでフリーランスの友人と、お互いパソコンを持って、日本で言うところのスーパー銭湯的な施設に行ってみた。
久しぶりに湯舟につかれるだけでもありがたいが、おいしいレストランやWi-Fi完備の広い作業スペース、昼寝できる個室が揃っており、かなり良い場所だった。作業に飽きたとき、前から気になっていたドラマ「开端」を視聴してみた。ふたりの主人公は、自分たちの乗っているバスが爆発する(早口言葉ではない)運命からどうにか逃れるため、タイムループを繰り返す。日9のドラマのようなハラハラするストーリーで、面白い。風景に見覚えがあると思ったら、先月に訪れたアモイが聖地だったので、嬉しさ2倍だった。全15話で完結しているのも、中国ドラマビギナーにとってはありがたい。
お風呂で汗を流して、ドラマを観て沢山しゃべったら、とても元気になっていた。秋の訪れと共に忍び寄ってきていた鬱の影が、すーっと遠ざかっていた。疲れているなと感じたら、お風呂につかってみることを強くおすすめする。平日の人が少ないときが快適だ。
ちなみにお風呂場には果物がたくさん置いてあった。きっと中医学的に大事なことなのだろうと思えば、「入浴後は低血糖になりやすいため……」とエビデンス重視の長い説明書きがあった。この内容は誰に向けたものなのかしらと考えていたら、のぼせてフラフラになった。阿姨たちに座らされ、ぬるめのお湯をたくさん飲むよう言われた。そこは果物をすすめるべきところではないのか。いつもの中国の面白さとあたたかさを感じられた。