「留学を終えて②」木村水映(北京外国語大学)

(「後期」レポートより続く→)

ボランティア活動にも取り組むことが出来た。北京外国語大学日本人会という組織の立ち上げメンバーの一人として日中文化交流イベントの企画や広報、運営などに携わった。

今年4月に開催した交流会では、招き猫を石膏の型取りから準備し、参加者の皆さんに絵付けを体験して頂いた。この交流会は、学内だけでなく、北京市に住むすべての方を対象に参加を呼びかけたもので、清華大学や北京大学などの大学生をはじめとし、地域に住む子どもたちからお年寄りまで多くの方々に日本文化への理解を深めてもらうことができた。

イベントの開催にあたっては、中国にある日本企業に協力を仰ぎ、多くの企業の皆様のスポンサー支援によって、企画を実現することができた。

 

日中文化交流イベントを開催

 

さて、この活動から広がったつながりをきっかけに、雑誌『人民中国』のリポーターとして取材をするという機会にも恵まれた。中国の伝統文化である春節の舞、「舞龙」のクラブ活動に取り組む現地の中学生たちにインタビューをした。

 

番組の様子

 

こうした活動を通し、中国語の基礎を盤石なものにするという目標のひとつを達成できただけでなく、中国で巡り合った一人ひとりとの絆という、これから生きていく上での大きな財産を得ることもできた。

様々な貴重な経験をさせていただけたことに、日中友好協会をはじめご尽力いただいたすべての皆様に改めてお礼申し上げたい。

学生の本分である大学での学びにおいてご報告申し上げると、1年を通じて全科目1位という成績を修めることもできた。

 

修了式に孔子像の前でパシャリ

 

本稿を読んで下さっている皆様の中には、今年から中国に留学する方もいらっしゃるだろう。これから始まる留学に心踊らせている方や、初めての海外での長期生活に不安を抱えている方、第一志望の大学に合格しなかったことを未だに引きずっている、という方もいるかもしれない。

留学を終えた今、私はこう考える。

どのような環境でも、ベストを尽くし達成感を味わいながら日々奮闘する人に勝るものはない。

春空を彩るソメイヨシノだけが桜というわけではないように、花咲く季節は一人ひとり異なる。いくら過去を悔やんでも、明日を憂いても、私たちが生きられるのは今しかない。すこぶる順調でも、挫折の真っ只中にあっても、自らの信念を貫き、誠実に「今」を生きる。今、置かれた場所で精一杯根を張り、たゆまず水をやり続け、開花の時を待つ。それが、地味なようで一番幸せな人生だということを決して忘れてはいけない、と。

「上善は水の若し。水は善く万物を利して争わず、衆人の悪む所に処る、故に道に幾し。」

私の「水映」という名前の由来になったこの『老子』の言葉が、北京外国語大学の中文学院ホールに彫られているのを見つけた時には、この大学での学びに深い縁のようなものを感じた。

この言葉の意味は、皆様にはご紹介するまでもないが、改めて申し上げると、「水は、あらゆるものに恵みを与えながら、争うことがなく、誰もが厭だと思う低いところに落ち着く。だから道に近い。変幻自在で柔らかく、しなやかであるからこそ、水は最も大きな力を潜めている。」というものだ。

国境の隔たりを諸共せず人と人との間に染み入る「水のように」、日中友好の架け橋として使命を果たしていきたいという決意を胸に、私は今日も前に進む。

 

8/11に開催された、中国政府奨学金留学派遣事業50周年記念講演会にて