『どうか、そのままのアナタで』木村水映(北京外国語大学)

 

北京外国語大学で受験する最後の中間試験を終え、留学もいよいよ終盤に差し掛かってきた。友人との別れを意識すると、時折寂しさで胸が締め付けられそうになる。それぞれの故郷に帰っても、これから何十年先もお付き合いしていきたいと思える友人らとの出会いは、留学における最も大きな収穫の一つだ。私には世界各国に味方がいる、国籍は違えど、同じように中国語を愛し、夢や目標に向かってひたむきに学び続ける同志がいると思うと、それだけで明日への活力が湧いてくる。

 

留学生向けの課外学習が豊富であることも北京外国語大学の特長。5月は山西省での実習に参加し、世界遺産・平遙古城に宿泊した。写真は、面食博物館にて行った餃子作り体験の様子。

 

北京外国語大学は、中国語を学ぶ留学生にとって最高の学習環境が整えられている(詳細は3月のレポートでも述べた通り)。学生個人の自由度が増す大学においてもなお、中学・高校のような手厚い学習サポートが行き届いているということは、決して当たり前ではないだろう。特に、試験結果の順位が発表されることと、先生方の一人ひとりに向き合った指導は、今の私にとって大きな励みとなっている。

 

今学期、私は「飛び級制度」を利用し、実力より遥かにレベルの高いクラスで学ぶ選択をした。学期が始まったばかりの頃は、周囲のレベルの高さに圧倒され、自信を喪失してしまったり、本来は活発に発言できるはずの話し合いの場においても、自分のペースを失い、意見を言い出せなくなってしまったりと、壁にぶち当たっては砕け、ぶち当たっては砕ける毎日の連続だった。ハイスピードかつ難易度の高い中国語を話すベトナム出身のクラスメイトに突然話を振られ思考が停止し、一言も返答できず、しまいにかけられた「水映ちゃんは人の話を聞けない人なんだね」という言葉に深く傷ついたこともあった。

 

そんな中、ある教授が、「水映の成長速度は誰よりも速い。周りと比べず、未来の自分だけを真っ直ぐ見つめて真摯に学び続ければ、これからも止まることなく必ず成長していける。アナタの決して諦めない粘り強さと本気で学ぶ姿には誰も勝てないんだよ。どうか、そのままのアナタでいて。」と声をかけてくださった。

 

今の私がめげずに走り続けられているのは、この言葉があったためだと言っても過言ではない。教授の言葉を受け、自分の葛藤や奮闘をずっと見守ってきてくれていた人の存在を初めて認識し、安堵にも似た感情を覚えると共に、中途半端に他人を意識するのではなく、未来の自分だけを見据え、やるべき事をこなしていくことが成長への一番の近道なのだと考えを改めることができた。「中間試験で全科目95点以上取得する」という具体的な目標を定めたことで、取り掛かるべき課題が一気に明確になり、毎分・毎秒をより濃厚な時間へと変えられるようになった。

 

「課題」と言っても、「予習・復習を欠かさない」「疑問は授業中に全て解決する」「小テストや課題の準備は完璧に仕上げることを努める」といった当たり前なことばかりではあったが、基本に忠実に、毎日着実に続けてきたことで、中間試験では全科目95点以上取得という目標を叶えられ、全ての科目で1位の成績を収めることができた。気がつけばクラスメイトや先生方の話す中国語は一言残らず聞き取れるようになり、グループで課題に取り組む際や話し合いの場でも、本来の自分のペースを取り戻し、積極的に意見を伝えられるようになったことで、リーダー的役割を任されることも自然と増えてきた。

 

プレッシャーを原動力に転換し壁を乗り越えていく快感を知ったことで、今ではあえてチャレンジングな選択を挑むようになった。留学生はたった一人、自分以外の164人は全員中国人という合唱団に所属してみたり、合唱団内のオーディションに挑戦し、1年に1度の定期演奏会でソロパートを務めることになったりと、「挑戦」を軸に行動できるようになったのだ。

 

「そのままのワタシ」を大切に、揺るがない自分の軸を持ち続けることはとても難しい。他人と比較して焦ったり、卑屈になったりすることは人間なら誰しも経験することだろう。しかし、それも含めて「ワタシ」なのだと受け止められる強さこそが自分を守る盾となり、目の前に立ちはだかる壁を打ち破る武器となるのではないだろうか。

北京外国語大学では著名人によるイベントも多く開催されている。5/31には黒柳徹子さんによる特別講義が開かれた。