「日本と中国、似ているところ、異なっているところ」井口智奈(中国伝媒大学)

 

これまでのレポートでも「電車や新幹線の乗り方が違う」「広告が明るい」「〇〇が安い/高い」といった違いや、反対に共通点について要所要所で言及してきた。今回はこれまでに触れなかった共通点や相違点について順不同で紹介していきたい。

中国と日本の共通点

情報収集は基本的にSNSで

そもそも中国や日本だけではなく全世界的な流れかもしれないが、旅行やグルメ、ファッションにコスメといった趣味嗜好に関して調べたい場合は、検索エンジンや書籍よりもSNSを使って情報を調べることがほとんどだ。

特に使用率が高いのが中国版Instagramとも称される小紅書で、レコメンド機能が優秀なため、単純にフォロワー数やいいね数が多い投稿だけでなく、少ないいいね数でも本当にためになる投稿を見つけることができる。
私はとにかく行ったことのない場所に出かけるのが好きなため、休みのたびに小紅書上で「北京 Citywalk」や「〇〇(駅名)美食推存」などのキーワードを調べている。

 

 

 

△4月の中旬に長沙&武漢旅行に出かけたのですが、この時も基本的に小紅書で調べてプランを組みました

 

意外と婉曲表現が多用される

よく知られるステレオタイプとして、「日本語には回りくどい表現が多い」「中国人は直接的にものを伝える」といったものがあるが、実際に中国で生活してみると、中国人も日本人と同様に柔らかい言い回しを好むのだと感じた。

具体的に良い例文が思いつかないのだが、はっきりと好き嫌いや良い悪いを伝えるのではなく「有点(一点)~」「比较~」等を使って程度を弱めた方が好ましいとされている点、「次の機会に〜」「また一緒に〜」といった挨拶は口約束になりがちな点などは共通点と言えるかもしれない。

また、例えば不当な扱いを受けた悔しさを表す形容詞である「委屈」は、「委屈你了」などの形で「あなたにやりきれない思いをさせている(=そんな思いをさせるなんて申し訳ない)」というお詫びのニュアンスを表せる。
この単語を習った際に日中間で言葉の扱い方に改めて似たものを感じ、言語学習の面白みを再認識した。

 

中国と日本の相違点

飲酒習慣の違い

中国の街中を歩いていると、日本の街中ほどいわゆる”酔っぱらい”状態の人に出会うことがかなり少ないことに気づいた。
新歓シーズンの大学生、花金の夜のサラリーマン集団、コンビニで買った缶チューハイやビールを手に街を歩く人々etc… ここ数ヶ月の間、こうした光景を見た記憶がほとんどない。

飲食店に入っても、お酒ではなく食事がメインの店やチェーン店で飲酒をしている人はあまり見ない。個人的に、日本にいた頃からチェーン店で食事のついでにお酒を飲むのが好きだった身としては少し寂しくもあるが、TPOに合わせた飲酒習慣が身についているのは見習うべきところだなと思う。

 

レポート及び発表スライドのボリューム

授業の合間や期末課題にレポートや各種発表が課されるのは日本でももちろんよくあることだが、課題の要求への対応具合が両国の学生間で異なるように思う。
例えば「5000字以内」という指定のレポート課題の場合、日本の学生であればおそらく4000字〜6000字の範囲で提出する人が多いのではないだろうか。

中国の学生の場合、300字なら1000字、5000字ならば10000字、5分以内の発表なら15分超えと、要求の倍以上のボリュームで仕上げる学生が多い。

間違いなく勤勉だし、行動力が素晴らしいと思う反面、何十人もいる学生の採点をする教授に大きな負担をかけることでもあるため、望ましい行動とは言い切れない。
実際に「4000字以内のレポート」という課題を出したある教授は「絶対に10000字を超えないでね」と授業中何度も念押ししていた。

あくまで自分の身の回りの話ではあるが、私だけではなく、大学院生(研究生)である私のルームメイトも同じことを言っていたので、ある程度上記の傾向があるのだと思う。

教育文化の違いをこのような点で感じられるのも、留学の醍醐味だなと感じる。