留学生活は様々なことが新鮮で、日々の小さな体験がどれも面白く感じます。1・2月は50日間にもおよぶ長期の冬休みがあったため、今回は冬休みの体験に関して報告したいと思います。
まず1月後半から2月初旬にかけて、10日間の旅行に行ってきました。私は大学卒業を目前にして突如旅行の楽しみを知ったのですが、就職してまもなくコロナの流行で旅行が困難な状況になってしまったため、4日を超える一人旅行は初めての経験でした。学生という身分のため、使える時間はあるものの予算は有限。そこで今回は4都市を巡って10日間の宿泊費・交通費込みを計800元に収めるという、いわゆる“穷游(貧乏旅行)”に挑戦することにしました。
以前のレポートで言及した“特种兵式旅游(特殊兵式旅行)”と異なるのは、時間的な余裕がある点と、訪れる観光スポットの数を求めないという点です。私は人が多すぎる観光地や列に並ぶ行為があまり好きではないため、各地で食べたいものとやりたいことをピックアップし、その他の多くの時間を散歩に費やしました。
結果西安の城壁の上を自転車で一周したり、天水で石窟をみたり、成都・重慶で茶馆の愉しみを知ったりと、10日間少ない予算で十分に満喫することができたのですが、やはり功を奏したのは“青旅(青年旅舍、ユースホステル)”を利用したことでしょう。
青旅は一般的に1部屋4~10人分ほどのベッドがあり、それぞれがカーテンで仕切られたそのベッド一つ分の空間を借りる、というような仕組みになっています。泊まるのは初めての経験だったのですが、今回宿泊した3つの青旅ではどこも非常に快適に過ごすことができました。なにより、圧倒的に価格が安い。比較的立地のいい場所を選びましたが、それでも毎度1泊22元(440円)~27元(540円)で泊まれたため、その分たくさん各地の特色料理を食べることができました。ただ、通常のホテル同様に外国人は宿泊不可の場所も多いため、事前によく詳細や口コミを確認することをお勧めします。
また、私の大好きな中国交通事情に関してですが、今回初めて火车の硬卧(寝台列車)に乗車しました。硬卧は3段ベッドになっており、一番安い一番上の位置を購入したのですが、まず上るところから大苦戦。通路に面した小さな梯子を上るのですが、あまりにも狭く、リュックを背負ったままだと途中で突っかかってしまうのです。とはいえリュックを先に置くにも手が届かず……。周りの席にいた方々にアドバイスと温かい声援を送っていただきながらなんとか登りきると、今度は天井があまりにも低いことに気が付きます。座って上半身を立てることができないほどの低さになっており、水を飲むにも一苦労。
この旅程は乗車時間が13時間と比較的長めだったため、この先大丈夫だろうかと少し不安になりましたが、洗面所に行くため二・三度上り下りを繰り返してコツをつかんだ後はとても快適なことに気が付きました。下の比較的高価な位置と違って通路を行き交う人の喧騒に悩まされることなく、十分に睡眠をとることが可能。ぎゅうぎゅう詰めで混沌とした座りっぱなしの硬座もなかなか悪くない体験ではあるのですが、今後7時間を超える移動であれば、また硬卧を選びたいと思います。
その後、春節の年越し期間は4日間、湖北省で中国のご家庭にお邪魔させていただきました。人数が少なくお酒を飲む人がいない家庭ということもあり、一般的に想像されるようなにぎやかな宴会などはなく、穏やかに旧正月を過ごしました。
小区の広場では毎晩多くの住民が華やかに花火を打ち上げており、農村にある親族の方のお家を訪れた際も、到着と同時に盛大な爆竹が。来客があるたびに爆竹を鳴らすのが歓迎のしるしなのだと教えていただきました。上海の一部では花火・爆竹が禁止されておりSMSで警告メッセージも発信されていましたが、中国の春節といえばやはり個人的には賑やかな火花のイメージが強かったため、貴重な体験となりました。道路はどこも爆竹や花火の残りで真っ赤に埋め尽くされていたのが印象に残っています。
この冬休み、4都市への旅行と湖北省の郊外での数日を経て、やはり上海は広大な中国の1都市に過ぎず、それぞれの場所で全く違う文化が広がっているのだと実感しました。普段の上海での生活はあくまで上海における経験であり、それに拠って中国全体を語るのは非常に難しいということ。理解していたつもりではありましたが、改めてしみじみと感じ、より一層中国という国への興味が深まったように思います。