「新世界」木村水映(北京外国語大学)

爆竹声中一歳除す

(爆竹の音が威勢よく響きながら、また一年が去っていった)

春風暖を送りて屠蘇に入る

(風は屠蘇の盃に春の陽気を運んでくる)

千門万戸曈曈の日

(軒を寄せ合う家々に朝日が煌めく頃)

総て新桃を把りて旧符に換う

(人々は皆、古い桃符を新しい桃符へと掛け換えている)

 

王安石作、「元日」。春節を代表する華やかなこの七言絶句が大好きだ。原文にしてたった28文字。しかし、ここには新年特有の「あの」空気が確かに流れている。静謐なようでどこか浮ついた、あの空気。せわしないようでゆったりとした時間が流れる、あの空気。「あぁ忙しい」と口にはしながらもその口角は微かに上がっていて、新たに漕ぎ出し始めた一年への期待に胸が膨らむ、そんな、あの空気。

 

唯一聞き馴染みがなく、他の26文字とは一線を画していた2文字がある。「爆竹」だ。

宿舎の窓から見えた花火

中国における爆竹の起源は、今から約2000年前・漢の時代まで遡るという。怪物を人里から追い払うべく村人たちが始めたという伝説が由来とも言われていて、今では邪気祓いとしてすっかり春節の風物詩となっている。近年は大気汚染対策として制限されていたようだが、切望する国民の声に応え、まさに今年から規制が緩和されるようになった。

初めて爆竹の音を聞いた日のことは鮮明に覚えている。買い物から帰宅途中、宿舎まで目と鼻の先という所で、その音は突然聞こえてきた。乾いた銃声のような連続した爆発音。ただでさえ夜道に心臓を縮こませていたというのに、予想だにしない爆音が鳴り響いたことで、気が付いた時には半べそをかきながら宿舎まで全力疾走していた。宿舎の事務員の方に慌てた勢いのまま事情を説明すると、「あれは鞭炮(中国語で爆竹の意)だよ〜。聞いたことあるでしょ?」と平然とした答えが返ってきて拍子抜けしてしまった。

初のリポーター経験にワクワク!ドキドキ!

「面白い経験」といえば、1月末に初めてリポーターとして雑誌「人民中国」の取材・撮影(YouTube ver.はこちら)に関わらせていただいたことが最近では一番の印象に残っている。中国語で現地の中学生たちにインタビューをし、「舞龙」の歴史や彼女たちの活動に対する姿勢を学んだ。実際に舞の一部も体験させていただき、大変貴重な経験となった。正直な所、今回の取材のお話を頂くまで私は舞龙についてほとんど何も知らなかった。しかし、下調べや打ち合わせをする中で舞龙に対する興味がみるみる増していき、実際に中学生たちの演技を目の前で披露いただいた際は、いたく感動した。

中学生の皆さんにインタビュー

事前に気になった部分を中国語で取材し、新たな学びを得られた時の喜びは何者にも代え難い。映像に残っているのはごく一部だが、中学生やロケスタッフの皆さんと中国語で話す時間は十分にあり、「目的」としてではなく、「手段」として中国語を使うことができたという実感と達成感に満たされる1日となった。普段中々知る機会のないフィールドを体験・取材し、その存在をさらに多くの人に伝えるという活動そのものにも魅力を感じ、新たな扉が開けたような快感がそこにあった。

春節のライトアップ

家族で食卓を囲む姿が広告やライトアップに多く採用されていたのも中国ならでは