「留学を終えて①」木村水映(北京外国語大学)

昨年8月31日、羽田から北京に降り立って早一年。7月12日に無事帰国した。夢でも中国語が聞こえてくるような生活から一変し、中国語を忘れてしまうのではないかという恐怖にかられている今日この頃だ。

北京外国語大学は、多くの外交官を輩出しているという事で、「外交官のゆりかご」とも称されている。外国語大学というだけあって、メジャーな言語からマイナーな言語まで専攻でき、国際的な学問に興味を持つ学生も多く、留学生を歓迎するムードが常に漂っていて、私たちにとってはとても過ごしやすい環境だった。

タジキスタンやインドネシア、イラン、スペイン、ロシア、アルゼンチン、コスタリカ、ハンガリーなど中国語を通して世界各国に友人を持つことができた。学内にある留学生専用の寮では、韓国からの留学生とルームシェアをしていた。

 

世界各国に心強い仲間ができた

 

クラスが細かく分かれていて、自分のレベルに見合った授業を受けられたのも、北京外国語大学の大きな魅力であった。初級のAクラスから最上級のHクラスまで全部で8つのレベルに分かれており、学習歴一年半で留学に臨んだ私は、中級のDクラスで学んでいた。初めのうちは、全編中国語の授業について行くのに必死で、放課後に復習を始めると、次から次へと先生に質問したい箇所が出てきたり、朝予習を始めると、一遍の文章を読むだけなのに、午前中いっぱいを丸々使ってしまったりと、「いくら時間があっても足りないよ」と叫び続けるような毎日だった。

 

教師役として授業をする様子

 

今までの人生の中でも一番勉強したと言って良い程、中国語漬けの日々を送っていた訳だが、それでも勉強を嫌いにならず、むしろ学ぶことがどんどん楽しくなっていったのは、ひとえに留学先で出会った先生や友人の存在があったためだ。

私の一番の親友であり、勉強のライバルでもあったのは、ロシアの「シマちゃん」である。シマちゃんと食堂でご飯を食べたり、グラウンドで持久走をしたり、公園を散歩したりしながら、授業で習った単語を、その日のうちに、会話で使って覚えていくという復習スタイルは、個人的に最も成果を実感できた勉強法だ。

将来の目標や、理想の人生を語り合ったり、お互いの家族や好きなジブリ作品の話など本当に他愛もない事を報告しあったりする時間が、私にとっては一番の癒しになっていた。日本人とロシア人の私たちだが、会話で使うのはいつも中国語のみで、共通の中国の友人に面白い関係だねと言われたこともある。

中国語を勉強していたことではじめて、これほど素敵な友人に巡り会うことができ、「中国語を勉強していてよかった」と心から感じると共に、これからも中国語を学んだ先に新たな出会いや可能性が広がっていると思うと、ワクワクした気持ちでいっぱいになる。

お互いに試験勉強の進捗なども報告し合って励まし合いながら、楽しく学べたことで、1学期の試験は2人とも全科目90点以上を取ることができ、2学期からは二つ上の、上級Fクラスに飛び級して学ぶことになった。

帰国後も連絡は毎日欠かさず取っていて、今は、HSK6級のより高いスコアを目指し、お互い準備に励んでいる。

 

(「8月」レポートに続く→)

 

元々超が付くほどのマイペースな私にとっては、毎日が時間との戦い。 隣に座った友人にカメラを向けられていることにも気づかず、予習に必死になっていた。