「転換点」森下雅洋(北京語言大学)

留学も三か月過ぎ、中弛みの時期となった。同時に中国の「动态清零」も大きな転換点を迎える。10月まで数値上安定していた感染者数は11月中旬より北京市内で再拡大。同時に外出に必要な語言大ネット上の外出申請はBot認証から突如手動に切り替わり、実質学内ロックダウンへと移行、このロックダウンは12月19日の週まで続くこととなった。

語言大は先見の明があった。11月中旬より他校に先んじ返郷政策を独自施行、希望学生を地方に返すことを認めた。学生らは各々時期を見極め続々と帰郷していく。この3年間、彼らの受講スタイルは大きく変容しオンラインでの学習プラットフォームは整備され、教授らもパワーポイント等で効率的な授業を行う。それにより態々学校という檻に閉じ込められる必要はないとすぐ判断出来たのであろう。

白紙デモが起こる11月下旬には校内の生徒数はおおよそ6割以下になった。学生の相対数が減り、先んじて返郷政策でガス抜きを行った語言大は、報道のような集会やデモは起きなかった。

自分も10月中旬より語学力等向上の鈍化を感じ、何か手立て打たねばと考えていた。3年前の本留学プログラム志望時の動機に「論文を書きたい」と目標を掲げていた事がずっと頭に残っていた。そしてネットの知り合いより「二十大(10月24日)の人民日報を購入してほしい」と依頼を受けた、これが大きな転換点だ。購入した24日の一面二面に目を通すと一人興奮していた。政治スローガン的な頻出語彙をひたすら眺めていく。紙面では中央政府の強烈な指令や、中共への賛美等が光り輝いている。思考に染まるという訳ではなく、唯々「この四字熟語、この言い回しで称賛するのか、できるのか」と驚いた。

テキストマイニングを人民日報でやろう。と考えた。データ等詳細は添付ファイルを参照されたい。企業サイトを利用、手動で行い多少のブレはあろうが、有益なデータや考えを得た。

人民日報は中共の機関紙であり、包み隠さずその考えを紙面に反映する。依って日本報道機関より受け取るニュースより遥かにノイズが少ない。そして我々日中のコロナ禍の酸いも甘いも経験している現段階の訪中日本人の私という立場からすると、日中双方のこのコロナ政策等の諸々の問題点、違和感を感じる場面が大いにあった。たくさんあるが強いて言えば、なぜ中共は「动态清零」末期、北京で感染者数が再拡大の兆候を察知しながら、諸々の「优化措施」を推し進め、各地で大規模デモを許したのか。また动态清零(中共の指示)の成果をアピールするのであれば、可能であろう感染者数の数値の操作をなぜ行わなかったのか。

明らかに中国共産党の政治統治体制の転換点を迎えているということは間違いない。失策のアピールにも取れる数値公表、デモでの現状変更の容認からの方向転換の前例作り、現状に至る急速な移行。そして末期に自由を求めた中国人民らは、自由を得た今、却って自主的に外出を控えている。当たり前ではあるが、中共は外国の分析よりも、遥かに上のレベルで現段階の自国民の特性や文明度を正負両方面で理解し、成すべき管理と統治を行い、結果をも見据えているということだ。

このような様々な事に気づけたのも人民日報の調査のおかげであり、成長点であろう。掴めるようで掴めない星のような中国を理解するのはとても難儀だろうが、この人民日報マイニングを続けていき、知識理解を深め、さらに上の段階へと足を進めていき、焦点をあわせていきたいと感じる期間であった。

人民大会堂

天安門遠景

和平门

红螺寺

写真は10月より11月の学内ロックダウンまでに迎えた観光地です。

天安門広場は自分の予約失念(入場に1日前の予約が必要)により遠景のみ、红螺寺は北京郊外の紅葉スポットです。

和平門は前門よりわき道にそれ、胡同に迷い込んだ際の私邸のドアです。

人民日報まとめ

「人民日報まとめ(中国語で作成)」大学の人文地理の期末課題に自主的に提出したものです。

10月人民日報まとめデータ

11月人民日報まとめデータ

12月人民日報まとめデータ

エクセルデータご参照ください。自主的なデータのため、データの見にくさはご了承ください。