8月24日午後1時ごろ、東京電力は、政府の方針に基づき、福島第一原子力発電所にたまるトリチウムなどの放射性物質を含む処理水について海への放出を始めました。それからというもの、漁業関係者をはじめとする日本国内における反発は勿論、海外諸国からの問題視、とりわけ中国からの迷惑行為について、世間で取り沙汰されるようになりました。私自身も渦中の件について肯定的な気持ちにはなれないものの、そういった負の感情を実際に他者にぶつけてしまっている人を見ると、胸が苦しくなります。日中間に焦点を当てて言えば、これまで先人達によって地道に築き上げられててきた関係性や信頼、イメージが、そうした振る舞いによって簡単に崩され、最悪の場合、互いが互いを辱めてもよい対象としてみなすようになってしまうことになりかねません。しかも2023年度派遣生の皆さんにとっては、まさにこれから中国へ行くぞ、というタイミングでこの状況ですから、本来なかったような不安までトランクに詰め込むことになったのでは、と勝手に心配しています。
また私事ではありますが、留学中、私は2人部屋(奨学金生は無料)から1人部屋へと自費で引っ越した(約3,000元)という苦い経験があります。というのも、いつの間にか室友との間に不健全な上下関係が生まれてしまい、私の意見は無視され彼女が絶対という、もはや修正できぬほど精神的に苦しい状態になってしまったからです。勿論、そうなるまでに私がとらなければならなかった毅然とした態度や振る舞いはあったと思いますし、結局最後まで英語なり中国語なりで真っ向から相手にぶつかれず逃げてしまった後悔もずっと残っています。ただ、私はここで「私実はこんなつらい経験をしまして…」と同情を誘いたい訳ではなく、「合わない人は合わないし、合わせる必要もない」ということをお伝えしたいのです。
自分で言うのもおこがましいですが、私は割と柔軟に他人の意見を受け入れられますし、相手が傷付かないような言葉を選んで発しているつもりです。しかし、こうした本来長所であるはずの一面が、他の誰かには気弱で、自分の意見をはっきり言えない、又は持っていないように見えたり、下に見てもいい、軽んじてもよい相手だと映る場合もあります。悔しいですが、私は留学中、室友に限らず実際にこのような扱いを受けたことが何回もありました。それも留学の醍醐味、と言えば聞こえは良いですが、けして気持ちのいいものではないですし、傷付きます。留学は一年という短い時間しかありません。だからこそ、「あ、この人は私との時間を大切にしてくれないな」「対等に見ていないな」「今、私は相手に都合よく使われているな」など、少しでも違和を感じたら、その人と関わり続ける必要はないと思います。その人と距離を置き、新たに気の合う誰かを探しに外へ向かうことこそ、留学の醍醐味と言えるはずです。
ここまで、ネガティブなことばかり述べてきてしまい恐縮ではありますが、留学を通して私が感じたものを少しでも共有できていれば幸いです。勿論私も留学を振り返ると真っ先に楽しい思い出が浮かんできますが(これまでのレポートで申し上げているように)、その後ろには、嫌な思いをした経験が確かに存在するということをお伝えしたかったのです。とはいえ、私が中国で出会ったのは、誇張でなく、みな親切で情に厚い方ばかりでした。これから中国へと向かわれる皆様が、健康で充実した時を過ごせるよう、お祈り申し上げます。