「前期を振り返って」有馬 万達(南京大学)

2021年の九月から中国政府公費留学生として、南京大学に留学して早くも半年が経とうとしています。九月にオンラインで留学が決まった時は、私にとって初めてのことだらけだったため、やはり慣れないことが多く、戸惑うことが多かったです。特に口語(スピーキング)はこれまであまりする機会がなかったこともあり、なかなか流暢には話せませんでした。しかし、先生やクラスメイトが和やかな雰囲気を作ってくれたり、サポートしてもらったりしてもらったことで、授業も前向きな気持ちで参加することができました。国や地域が異なる人たちと中国語で交流することで気付けたこともありましたし、自分の中の興味がさらに広がったように感じます。最初は長い文章があると読めない漢字がいくつかはあったのですが、今ではある程度の難易度の文章なら難なく読めるようになり、感覚的にもスッと理解できるようになりました。特に普段生活している中で度々聞こえてくる中国語が理解できるようになったり、中国語のネット記事がほとんど翻訳なしで内容がわかるようになったりすることは自分の成長を実感することができましたし、日本の大学に復学した際の学習にも活かせることができるなと感じました。そういった経験から中国語は触れれば触れる分だけ学習が進むことが体感できたため、より一層現在の中国的価値観にも興味が湧き始めました。これまでは中国文学は古典のイメージが強くて、あまり現代の中国小説は読んでこなかったのですが、最近では中華圏SF小説がマイブームとなっていて、歴史的大変革と急速な発展を経験しながらも、それぞれ様々なバックグラウンドを持つ中華圏の作家たちの想像力と思想はとても興味深いです。こういったマイブームとなった出会いも、前向きにオンライン留学に取り組んだ結果として生まれたものでもあると思います。中国語教室のボランティアや留学でできた友人などのつながりも中国と積極的に関わりを持っていく中でできたものなので、そういった点では良い前期を過ごせたのかなと思います。

しかし、正直時々やるせない気持ちになることも事実です。中国留学を思い返しても、ほとんどが画面の中の出来事で、さらに自分一人で完結してしまっていることがほとんどです。なるべくオンラインの良い点を考えて日々過ごすようにしてきましたが、他国に現地留学している人や過去に経験した人の様子を見ると、どうしても現状が空虚なもののように感じてしまいます。また月末に留学生レポートを書こうとするときに書くことがほとんど見つからず、なかなか進まないことが辛く思うこともあります。来年には…次の休み明けには…変異株が収束すれば…オリンピックが終われば…などといった言葉が出るたびに期待するあまり何度もモチベーションが下がってしまいました。さらに普段の生活に大きな変化がなく、留学の実感が薄いため、このまま日本にいて「何もしなかった人」という風に判断されるのではないかと思う時もあったりします。しかし、こういったコロナ渦でのネガティブな感情は今に始まったわけではないですし、同じように、それ以上に苦しんでいる方も大勢います。これからも先の見通せない状況は続くと思います。結局のところ、そういったときにこのウィズコロナ形式がよりスタンダードに感じられて、有意義なものになるように日々工夫するしかないのだと思います。受け入れ大学側や日中友好協会の方々がそういった姿勢で私たちを支援してくださっていますが、そういった方々に頼るだけではなく、コロナ渦の当事者として、周囲の人と同様に、自分自身も積極的に取り組んでいかなければならないなと感じました。

世界情勢はこれまでにないほど緊迫している状況ですが、その中で生活していくものとして自分のできることをしていきたいと思います。留学も折り返しとなったので、後期はより日々を大切に過ごすように意識して有意義な留学生活にできるようにしたいと思います。