始まりは武漢のアパートから 中国での温かな出会いと学び

2025年3月1日号 /

友好訪問プロフィール

主婦

金丸かなまる利枝りえさん


1970年、福岡県生まれ。地元の大学を卒業後、会社員を経て、2012年に夫の転勤に伴い中国・湖北省武漢へ移住。その後、2016年に江蘇省蘇州、2022年に広東省広州へ転居。地元の人々との交流や大学での中国語課程を通じて中国語を習得。2024年、日本僑報社主催の第7回「忘れられない中国滞在エピソード」で中国大使賞を受賞。

2024年12月27日、東京の中国大使館で開催された第7回「忘れられない中国滞在エピソード」作文コンクールの授賞式において、主婦の金丸利枝さんが最優秀賞(中国大使賞)を受賞し、一躍注目を集めた。金丸さんの受賞作である「中国で人生初のご近所付き合い」は書籍のタイトルとなり、表紙には金丸さんの顔写真が飾られ、日中両国で広く読まれている。金丸さんに、その思いを聞いた。

応募の経緯

中国での滞在期間が10年を超え、生活にもすっかり慣れた頃、私は日本から来たばかりの人に中国生活のアドバイスをしたり、地元の中国人と積極的に交流したりと、以前よりも余裕を持って生活していることに気付きました。そして、「この今の自分の姿を、2012年に中国に来たばかりで不安を抱えていた自分に教えてあげたい」と思うようになりました。

そんな折、「忘れられない中国滞在エピソード」作文コンクールの開催を知り、自分の中国生活を文章にしてみたいと思い、応募を決めました。

受賞の感想

まずは、「思いもよらなかった」という一言に尽きます。私の作文は、決してドラマチックなものではなく、日常生活の中で起こった小さな出来事を淡々と綴ったものです。しかし、それは私にとって本当に大切な思い出でした。

自分の大切な思い出が、多くの方に共感していただけたことで受賞につながったのかと思うと、とても嬉しく感じます。書籍に掲載された私の作文を読んで、「最後のクライマックスでゾクゾクした」「続きが読みたくなった」などの感想をいただき、大変励みになりました。

また、この思い出を文章にする機会を与えてくださった日本僑報社様には、心から感謝申し上げます。

受賞作品の紹介

私は2012年、夫の転勤に伴い中国へ移住しました。当初は中国語が全く話せず、不安な日々を過ごしていました。そんな私が、中国・武漢のアパートの中庭で毎朝の体操仲間となった地元のご近所さんたちと交流を深めていく様子を、応募作文として綴りました。

この心温まるご近所付き合いのおかげで、中国での生活への不安が和らぎ、大学の語学課程で中国語を学んだり、中国の歴史や文化に触れたり、さらには地方の方言にも興味を持つようになりました。作文の中では、「もっとご近所さんと話したいのに、語学力が足りず悔しい思いをした」というエピソードを紹介していますが、その悔しさこそが、その後の学習意欲の原動力となったのです。

将来の抱負

昨年10月、夫の日本への転勤に伴い、現在は日本で生活しています。街で中国の方が道に迷っている様子を見かけたら積極的に声をかけたり、職場の飲食店でも日本語が分からず困っている方には中国語で話しかけるようにしています。

日本では、日本人が中国語で話しかけることはまだ珍しいようで、驚かれると同時にとても喜ばれます。今後も、中国で私が受けた小さな親切を、今度は日本で私が実践していきたいと思っています。

(聞き手:段 躍中)