京劇に魅せられて 日本で京劇の魅力を伝えたい

2024年9月1日号 /

友好訪問プロフィール

中国戯曲学院京昆系3年

田崎たさき満耶子まやこさん


1986年東京都出身。学生の頃京劇を学んだ後、在日京劇団「新潮劇院」入団。専門は武旦(立回りの女性役)、刀馬旦(女将軍役)。日本では魯大鳴、張春祥、張桂琴、塩沢伴子に師事。2022年より中国戯曲学院京昆系に入学。田氷、陸二妞、馮海栄、李紅艶、王暁燕、王萌、李丹等各師に師事。代表演目に「扈家庄」「借扇」「覇王別姫」「天女散花」「悦来店」等。

京劇との出会い

2000年頃に、たまたま家にあった北京京劇院の三国志のビデオを観る機会がありました。具体的にどこがよかった、こういうところが印象に残ったという記憶はないのですが、京劇の世界観に引き込まれるような感覚がして、とにかく夢中で観たことは覚えています。

私は幼少期から舞台経験があり、エンターテイナーになりたかったので、実際に京劇をやってみたいと思いました。ネットで調べて、中学3年生で都内の京劇教室に入りました。教室は、先生は中国人でしたが生徒はみな日本人で社会人、時々若い方が入ってきますが、趣味の教室のようなものでした。

23歳のときに新潮劇院という劇団に正式に入り、それからずっとレッスンを受けながら舞台に立っています。日本人でもプロとして舞台に立たせてもらえる劇団です。

京劇俳優としてのキャリアを日本で積んではいましたが、中国に留学して京劇を学びたいということは10代の頃からずっと考えていました。しかし私は中国語が話せなかったので、まず日本で3年間中国語の学校に通いました。京劇の発音や台詞回しは独特なので、京劇をやっていても中国語ができるようにはならなかったのです。

念願の中国留学

感染症の影響もあり、ようやく中国戯曲学院に留学することができました。戯曲学院に留学させてほしいと手紙を出して直談判しました。京劇留学生は私だけです。他の中国人学生は附属中の出身者や小さい頃から学んでいた人ばかりで基礎力が違います。

また、私は現在30代なので、年齢の壁もあります。立ち回りのある役柄は幼さも求められるので30歳ほどで引退する方もいる中、立ち回りにもチャレンジし続けています。10代で京劇を始めたときも遅すぎると中国の方に言われましたが、そんな私が今こうして京劇留学できていることは本当に奇跡だと思っています。様々な経験をしてから留学したことで広い視野で学べ、この年齢で留学してかえってよかったと思っています。

日本で京劇を普及させたい

4年で卒業したら、日本に帰国する予定です。日本では、京劇を趣味として習いたい人はいますが、プロの京劇俳優になりたいという若者はほとんどいません。指導者も高齢の方が多く、若い指導者がいません。そのため若い生徒がなかなか定着しなかったり、公演だけでは食べていけないので他の分野に転向してしまったり、といった現状があります。

また、公演内容も中国でやっているものをそのままやるのではなく、日本人に向けた魅せ方などもっと工夫が必要だと考えています。私は指導者として若手の育成をしながら舞台にも立ち、日本での京劇の普及に貢献していくつもりです。

私は京劇を長年やっていますが、いまだに知らないことがたくさんあり、改めて京劇は非常に奥が深いと感じています。今後も中国とのご縁を大切にして、中国の伝統芸能である京劇の素晴らしさや面白さをもっと日本の方に伝えられるよう、努力を続けていきたいと思います。

(理事・全国青年委員会委員長 小田玲実)