中国と日本だけが漢字を使う。漢詩交流の可能性は大きい

2017年10月1日号 /

日中漢詩協会会長
古月 彦捷(ふるつき よしはや)さん

中国・大連出身。78年2月、文化大革命後最初の大学生として大連工学院(現大連理工大学)に入学。卒業後は化学工業部北京橡胶工業研究院に就職。92年に来日し、11年に起業、現在に至る。日中漢詩協会の詳しい情報はホームページ(https://rzsx.jimdo.com)を参照。

 

漢詩を好む人の輪を広げたい。昨年9月に日中漢詩協会を立ち上げた。現在200人以上が中国版LINEとも言われる「ウィーチャット(微信)」でつながり、情報を共有している。メンバーは主に日本に住む華僑、華人が中心。日本人はまだ少ないが、今後は「もっと日本の漢詩愛好家と交流がしたい」と考えている。

作品を発表し合う交流の場は「微信」

あちこちに点在するメンバーが一堂に会することは難しい。そのため、交流の場はもっぱら微信。聞くと、なかなかユニークな活動方法だ。

「誰かがテーマを出し、それをもとに皆で漢詩をつくり、発表し合う。日本に住む人が多いため、日本の文化や生活習慣に関するテーマになることが多い」

例えば、春には桜をテーマにしたり、夏は花火にしたり。温泉旅行に行った人がその様子を投稿してテーマになることも。先日は、自身を含む数人で東京・上野で開催された「何香凝芸術名作展」に出かけ、展示作品をテーマにした。

「互いにつくった漢詩を評価して楽しむ。〝漢詩好き〟という共通点のもと、様々な分野の人が集まって交流できればいい」。ホームページなどを通じて随時仲間を増やしたいという。

遼寧省出身。子どもの頃から詩が大好きだった。「中国人で詩が好きな人なら、誰でも自然につくれます」。初めて詩をつくったのは18歳の夏、今でもはっきり覚えている。

92年にシステムエンジニアとして来日し、今年で25年になる。この間、2005年に日本国籍を取得。現在は都内で6年前に起業したITソフト製作の会社を営んでいる。

漢詩づくり通じて相互理解深めたい

こうした中、近年のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の発達による微信の登場が、日中漢詩協会をつくる動機になった。「中国語が母語でない日本人がつくる漢詩はかたさがあり、中国人のものとは雰囲気が違うが、日本人の漢詩に対する知識はとても豊富で感心させられる。両者が漢詩で交流すれば、相互理解も深まり、レベルアップもできる。一味違った作品が生まれるのではと期待している」

今、中国では漢詩が注目されつつある。昨年、中国中央テレビ(国営)が漢詩の知識を競うクイズ番組を放送すると、今年は同様の番組を放送する地方のテレビ局が増えているという。

「中国と日本だけが漢字を使う。漢詩交流の可能性は大きい」。11月にはこれまでに集まった漢詩を厳選してまとめた作品集を出版する予定だ。「今後は雑誌(会報)を出したり、漢詩教室や展覧会も開催したりしてみたい。とにかく漢詩の魅力を発信していきたい」と意気込む。
(北澤竜英)