変面の音楽

変面を見たことがある人は、その音楽について印象に残っている人も多いのではないだろうか? 迫力ある歌唱に独特のリズム、「一度聞くと耳から離れない」と言う人も多い。この曲は「变脸(Bian Lian)」と言い、四川省出身の著名な歌手、陳小濤氏が歌唱している。陳氏は自身の故郷、四川省の文化を歌という形で全国に広げたいと考えていた所、地方劇「川劇」の代表的な存在である変面を歌にすることを思いついた。その歌詞の一部を紹介したい。

在天府之国喲 我們四川噻 有一種絶活既神奇又好看 活脱脱一副面孔 熱辣辣一絲震顫 那就是舞台上的川劇 川劇中的変臉…

(意訳:天府の国我らが四川で 1つの神業がある 不思議で美しい 生き生きした顔つきが熱を帯びて震えだす それは舞台上の川劇 その中の「変面」だ)

しかし元を辿ると、変面は伝統劇の中で用いられていたもので、伝統的な太鼓やシンバルなどを組み合わせた「打楽器の音色」に合わせて演じられてきた。変面芸術の本場、四川省の私の師匠・毛庭斎先生も、普段はこの伝統打楽器の生演奏に合わせて演舞している。

これを日本でアレンジできないものかと考えて取り組んだのが、日本人の打楽器奏者(パーカッショニスト)・見谷聡一氏との共演だ。見谷氏とは以前舞台で共演した経験もあり、「変面とパーカッションで、これまでに無いパフォーマンスを創らないか」という私の気持ちにも快く答えてくれた。

変面×パーカッションでの公演

変面の歌詞の意味も参考にしながら、日本語でオリジナルのセリフを加え、見谷氏による十数の楽器アレンジを加えながら一から構成を考えた。一から作るというのは難しい場面もあったが、実際やってみると確かな手応えを感じ、今年は地方での出張公演の予定も決まった。今後も伝統を守りながらも、創意工夫を忘れず、あらゆる可能性に挑戦していきたい。

文◎王文強(おう・ぶんきょう 変面役者)


公演ハイライト