弟子の成長

先月、コロナ禍で自粛となっていた長崎ランタンフェスティバルが3年ぶりに開催。盛り上がりを見せる市内の中でも、一際人気を集めるのは長崎孔子廟での変面ステージ。連日超満員の観客が来場するステージで、日ごろ長崎で活動している弟子の妃那(ひな、12歳)と初の師弟共演となった。

弟子の妃那(本名:小林奈由)と (撮影者:daisuke.takahashi)

妃那は父親と一緒に同フェスの変面ショーを見たことがきっかけで、若干小学校1年生で変面を始め、「日本最年少変面師」として長崎孔子廟で学業をこなしながら活動していた。

そんな中、コロナ禍でステージを披露する機会も減り、モチベーションの低下や自主訓練の壁にもぶつかっていたと言う。そんな時に孔子廟の藩館長から「弟子にしてくれないか」と私に声がかかった。

幼くして異国の伝統芸能を身につけるのは体力、精神的にもケアが必要で、本人との面談を通してまず彼女の気持ちを確認し、変面に対する真摯な姿勢を感じ、弟子として受け入れる事となった。稽古は中国の伝統芸能の基礎の動き、型を知ることからスタート(変面は単にお面を変える事ではなく、型や動き等の要素が相まった総合的な芸術だと考える)。この訓練は身体の柔軟性も必要であり、また単調でつまらなく、幼い妃那は中々辛かったと思う。でもこの3年間を通して、確実に成長した彼女の姿を今回同じステージで見ることができた。勿論多くの課題もあり、ステージ終了後には夜遅くまで一緒に補習を行い、濃い時間を過ごした。

師弟関係において大切なのは技術の継承は勿論、お互いの信頼関係・絆を深める事でもある。長崎という中国との関係の深い地域で、変面という中国文化を発信する大事な役割を担っている彼女の成長に今後も期待したい。

オンラインでの稽古風景

文◎王文強(おう・ぶんきょう 変面役者)