私の1日のスタートは、朝、自宅の庭で行う「长嘴壶茶艺(長い茶壺を使った茶芸)」の練習から始まります。日本ではカンフー茶芸や太極茶芸とも呼ばれています。
この茶芸が始まった起源については複数のいわれがありますが、お茶の生産でも有名な四川省に伝わる話によると、「かつて移動手段として船が頻繁に利用されていたある村では、船場が常に混み合っていた。船場近くでお茶の商売をしていた店主は、船人達から常に『早く、こっちはまだか』とお茶の提供を急かされ、どうしたらもっと早くお茶を淹れられるかと思案していた所、この茶壺を思いついた。先端が長い茶壷は遠くからでもお茶を注げ、また高所から注ぐ勢いによって茶葉が早く開き、短い時間でお茶が味わえると好評を呼んだ」。
その後、現代に伝わるに連れて长嘴壶はパフォーマンス性の高い茶芸技として発展し、中国の茶館などでも楽しまれています。
私は四川省を訪れた際にこの茶芸について触れる機会があり、それからコツコツと練習してきました。最初は練習用の重たい茶壷を回し続けて手首を痛めたり、投げたり回したりする中で鋭い口の先端が身体に当たり、頻繁にアザを作っていたりしました。習得まで中々時間がかかるものですが、練習をする中で全身の柔軟やバランス力、パワーなど複合的に身体を使うこの技は、コロナ禍で運動不足になりがちな身体を鍛えるためにもプラスになっていました。
そんな時、日本のあるテレビ局の番組から「中国の長い茶壺を使える人を知らないか?」と偶然連絡があり、今まで練習してきた成果を披露する機会に恵まれました(内容は団子屋の店員に扮して、お客さんにカンフー茶芸でお茶を注ぐという企画でした笑)。
まだまだ鍛錬が必要ですが、「芸は1日にして成らず」。皆さんの前でより感動を与えられるパフォーマンスができるよう、これからも技を磨いていきます。
文◎王文強(おう・ぶんきょう 変面役者)