変面への喜怒哀楽

この数年、中国伝統芸能「変面」は日本、海外で人気が高まっており、テレビやYouTube、四川料理店、様々なイベントなどで見ることができます。

変面役者として私は本当に嬉しく思います。また日本の変面ファンの年齢層の多くが実は若者達と知り、変面を通じて多少なりとも若者達が中国の文化を知り、興味をもつ、これは若者の対中感情においても、微力ながらプラスの貢献に繋がると感じています。

その一方で、この数年日本の方でも変面をやる人が増えてきており、彼等の変面動画を見ると、危惧している部分があります。

それは、変面の基礎(身体の柔軟や身段(動き)、技術、変面の振り付け)が無いなかで、単に「お面が変化しているだけ」の表現となっており、変面をやっている演者自身、また初めて変面を見る方々に対して、変面という「伝統芸能」への認識や理解が間違った方向に進んでしまう可能性があると、強い危機感を抱いたからです。

 

読者の皆さんの中には「中国国家秘密と言われている変面を、なぜ日本人ができるの?」と疑問に思った方もいるでしょう。

残念ながら最近では、変面の商業化が進み、日本でも変面に関する衣裳や道具のセット、手法などがネット上で商品として販売されており、これにより多くの人が手軽に変面を始められるようになるなど、今では日本のタレントやお笑い芸人、落語家、一般人、学生など幅広い人々が変面を始めているのが現状です。

ただ、変面をやりたいと思う人が増えること自体を悪いと思っている訳ではありません。

技の一部を手品的に披露するのではなく、変面という伝統芸能を伝えるために、正しい基礎・基本を習得し、中国発祥の文化芸術を通して、世界中の多くの人と感動を共有していって欲しいとの願いが強くあります。そのためには「正しい文化の普及と継承」が必要不可欠なのです。

そんな事を感じていた頃、日本人で変面をやっているという青年が私に連絡をくれました。そんな彼とのエピソードは……次回へ続く。

文◎王文強(おう・ぶんきょう 変面役者)