桜と言われると日本の春をイメージするが、実は中国でも桜が植わっている公園は多く、春の声が聞こえてくると「桜花節」と銘打ったイベントを見かけるようになる。
上海でも顧村公園、上海植物園、辰山植物園などで開催されるが、個人的に一番好きなのは魯迅公園の桜並木である。
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大迫力の桜並木
魯迅公園は上海市虹口区にあり、公園としては100年以上の歴史を持つ。虹口はかつて日本租界として日本人が多く住み、今も日本にまつわる旧居があちこちに残っているが、公園の名にも使われている魯迅も1927年から36年に亡くなるまで上海虹口に居を構えており、上海に移り住んでからはこの公園を散歩していたという。公園内には魯迅紀念館や魯迅の墓の他、中日青年世代友好を紀念した時計台などもあり、桜並木も含めて日本と中国の深い関わりを感じさせる。
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魯迅紀念館前の魯迅像と桜
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公園内の魯迅の墓
魯迅公園は前述の植物園や顧村公園よりも規模は小さめだが、桜の時期は最寄り駅である虹口足球場の出口を出た途端から視界いっぱいの満開の桜に出迎えられる。園内も中央の大きな池沿いに配された遊歩道の両脇に桜が植わっており、満開の頃はさながら桜のトンネルのようになっていてきれいなのだ。
桜の季節だけでなく、通年にわたって地元の人に愛される憩いの場となっており、劇中歌や楽器を練習する人、将棋やトランプに興じる人々、着飾って踊る人など、人々の趣味に興じる姿が見られるのも楽しい。観光地ではない、そこで生活する人々の生の雰囲気を感じられるのが、この公園の魅力の一つだと思っている。
また、公園近くにはその時代に活躍した文人や著名人が住んでいた多倫路文化名人街や、魯迅と親交の深かった内山完造の内山書店、上海一ロマンティックな道と人気の「甜愛路」など見どころも多い。
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多倫路にも文人たちの息遣いが残る
桜の時期を過ぎると、上海では夏になる前の貴重な外歩きしやすい時期に突入する。その間にまた往時の雰囲気を味わいに虹口を訪れたい。
(茂木美保子@上海)