上海のフォトスポットとして武康路を起点としたフランス租界エリアの人気が出てだいぶ経つが、2023年年末からまた新たな人気スポットが増えた。
ドラマ『繁花』の影響である。
2012年に発表された金宇澄の『繁花』は、60年代〜90年代までの上海を舞台に語られる長編小説だが、監督・王家衛、主演・胡歌により7年もの歳月をかけてテレビドラマ化されたのだ。
ドラマの舞台は80〜90年代の上海で、至る所で主人公阿宝が住む和平飯店がある外灘や南京東路〜人民広場、そして黄河路などの街並みが出てくる。
またドラマで使われる言語が標準語だけでなく上海語バージョンが作られたのも話題になった一つの要因であろう。
視聴者によるドラマの「聖地巡り」だけでなく、街側も話題づくりに余念がない。
1月中旬から始まった豫園の灯会では、今年の干支である龍のランタンと共に去年に引き続き山海経をベースにした『山海奇豫記』の海経編をモチーフにしたランタンが華やかに飾られているがそのキャラクターたちが『繁花』に出てくる登場人物に似てると話題に。さらに上海市内の各レストランでは、『繁花同款』と称しドラマ内で登場人物が食べたであろう料理を再現して提供するコースを出しているところもある。
そしてここに来てもう1つ。上海虹口の乍浦路上に1940年代の街並みが再現され話題となっている。
こちらは1945年新昌路上で実際に起こった事件をモデルとした陳可辛監督、章子怡主演の映画『醤園弄』の撮影地である。ロケセットが作られたのち、撮影がされていない期間は一般公開されているため一目見ようと皆やってくるのだ。
中国の最先端を行き日々開発の進む上海だが、一歩中に入ると昔懐かしい街並みも残っており今回紹介した建物群も違和感を感じない。その新旧が合わさり融合する不思議さがこの街全体をフォトスポットとして魅力的にしている要因の一つなのかもしれない。
(茂木美保子@上海)