時折友人と連れ立って、または1人で「ソショク」を食べにいく。
「ソショク」と聞くと「粗食?粗末な食事?わざわざ外に食べに行くの?」となりそうだが「ソショク」は素食と書きいわゆる精進料理のことである。そもそも中国語ではsushi(スゥシィー)と発音するが、日本人同士で会話する時は伝わりにくい(むしろ寿司と誤解されそう)ので敢えてソショクと日本語読みしているのをお許しいただきたい。
素食は精進料理のため一般的に肉魚など動物性の食材は用いない。場合によっては乳製品や蜂蜜、五辛と呼ばれる植物(葱、大蒜、韮、玉葱、ラッキョウ)なども使わないというところも。お寺の境内などに素食を食べられるレストランがあるほか、街中にもある。
日本の精進料理には味や盛り付けなど全体的に淡白であっさりしたイメージを持つが、こちらの素食はそのイメージを覆す見た目と味わいで最初食べた時は驚いた。写真を見ていただけるとわかるが、普通の中国料理と見た目遜色ない。肉の代わりに大豆由来のタンパク質食材を使うのだがしっかりとした味付けで物足りなさを感じない。出汁はキノコなどから丹念に取ったもの、さらに油も使うため食べた時の満足度がありつつ、動物性のものを摂取しなかった事で「なんか徳を積んだ気がする」というオマケ付きなのだ。
寺院の中にはこういった本格的なもののほかに簡単な麺が食べられる場所もある。こちらはスープに茹で麺を入れたその上に、別に油で炒めたキノコ類、油揚げ、たけのこなどとともに甘辛く煮込んだ餡がザッとのせられる。ごま油のコクとそれぞれの素材の旨みがスープや麺によく合い、一口食べたら箸が止まらなくなる。油を使ってるので最後まで熱々で、夏場などは汗だくになって食べ終わると身体がスッキリ軽くなった気がする。
一口で精進料理といっても二つの国でここまで違うのが面白い。
(茂木美保子@上海)