季節は今、まさに春である。
青島での生活は海とは切っても切れない関係で、食の面でも市場で採れたての海の幸を買うことが多かった。エビ、カニ、カレイ、タチウオ、イカなど日本でもお馴染みの食材も多い。また春といえばやはり鰆で魚編に春と書いて鰆という漢字になるように、青島ではまさに春の数ヶ月、市場に鰆が並ぶようになる。
切り身というものはないので、丸々の状態で店に並んでいる。一斤(500g)の値段を聞き、一本買いが基本。店の人に頼むと、エラや内臓、ヒレなどを取り除いた状態で袋に入れて渡してくれる。我が家は2人暮らしなのでそれを3枚におろし、数回に分けて食べていた。サバ科なので塩焼きでも味噌漬けにしても美味しいし、カレー粉と小麦粉をまぶして揚げても美味。春限定の楽しみの一つである。
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賑やかな市場の様子
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市場に並ぶサワラ
青島で生活してもう一つ新鮮な驚きだったのが、水餃子の具に海鮮が用いられることである。北方なので水餃子はよく食べるが、一般的な豚肉をベースにしたものはもちろん、海鮮はエビ、イカ、キグチ、そしてサワラなど様々な餡がある。エビはそのままの状態で包まれるが、イカやキグチ、サワラなどはペースト状にしたものにネギなどを加えたものが餡になる。一口口の中に入れると魚の臭みなどは全くなく、むしろふわふわとした柔らかい食感に噛めば噛むほどジュワッと海の幸の旨みが溢れ、思わず笑みが溢れる美味しさである。サワラの餡は家でも水餃子が作れるようにか、時期になるとスーパーなどにも餡が並び、食卓に欠かせない季節の食材なんだなぁ…と実感する。
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中身の餡によって皮に食物由来の色が付けられている
サワラは中国語では鲅鱼(bayu)と呼ばれる。自分が青島での生活を経験したからか、上海に戻ってきた後水餃子のお店に入ると鲅鱼水饺を取り扱うお店を見かけるようになってきた。気温が少しずつ上がり、春の陽気を感じる中で鲅鱼水饺を食べるたびに、青島での海辺ののんびりとした生活が恋しく思えるのだった。
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鲅鱼水饺の中身
(茂木美保子@上海)