以前青島の春節の時期に開かれる糖球会について書いたが、上海の春節時期のお祭りといえば豫園の灯会である。ランタン祭りというとイメージがつきやすいだろうか。
灯会は旧正月の十五日目にあたる元宵節を祭るものである。元宵節に花灯と呼ばれるランタンを灯す文化は漢代から始まり、呉王劉濞の時に揚州から松江(今の上海近郊)に入ったとされ、明代には普遍的に広まっていたという。
そのため本番は元宵節(今年は2月5日)であるが毎年春節前から始まっており、春節中や元宵節前後は観覧が有料になるのに加えて人が多すぎて身動きが取れない状態になるので毎年早めに見に行く事にしている。
豫園と言いつつ個人庭園の豫園ではなく隣に隣接する豫園商場が会場なのだが、近代的な建物がひしめく上海の中で数少ない江南地区の中国建築が楽しめる場所で上海の観光地として5本の指に入る場所である。そこが大小さまざまな、色とりどりの灯篭や干支を象った灯篭で飾られる。
普段も十分見ていて楽しい豫園の建物だが、そこに灯篭のあたたかい光が加わり、まるで時空を超えてファンタジーの世界にいるような幻想的な雰囲気となる。今年は山海経をベースにした山海奇縁記と題したテーマも加わり、ウサギだけでなくポケモンのような可愛くてかっこいい架空の動物たちもたくさんいて見応えがあった。
楽しみは灯篭だけではない。小吃と呼ばれるおやつも食べ歩きが楽しいし、毎年この時期に売り出される干支にちなんだおもちゃも見逃せない。酉年や戌年のときは根元にクリップのついた髪飾り、申年は孫悟空のつけている頭の羽飾りなど、こんなものがあるのかと感心する。今年は兎年というのもあって兔子灯と呼ばれる竹と紙でできた伝統的な春節の飾りだった。
こちらにいると西暦の元旦、そして春節と新年のイベントが続くが、自分にとってはこの灯会を見に行く事で「新しい年がやってきた」と区切りになるイベントとなっている。
(茂木美保子@上海)