神奈川県日中友好協会 経済文化交流部会は2023年11月22日、「10周年を迎える『一帯一路』の現状と未来への展望」をテーマに、第37回日中民間交流対話講座を開催しました。
中国物流研究会幹事で日本海事センター客員研究員の福山秀夫氏を講師に招き、国際物流の実際からその全体像に迫りました。
コンテナが世界を変えた
50年代、米国のトラック業者により貨物を迅速に海運へ繋ぐため発案されたコンテナ輸送。海陸空個別に積み替えていた荷をコンテナに詰めたまま目的地まで運ぶ。63年にコンテナ規格が統一され、80年代には国際複合一貫輸送が常識になった。同時期、米大陸横断鉄道やシベリア鉄道ではコンテナ搭載が進み、ランドブリッジ(LB)輸送が誕生。大陸が海と海との橋渡し=海鉄連運だ。
中國でもコンテナ化が進み、CLBが生まれたが、01年にWTOに加盟すると、輸出入が増加、トラックでは対応しきれず、03年から海鉄連運を掲げ、鉄道の現代化に取り組んだ。11年、鉄道のみを繋いだ国内ハブ駅―欧州の国際列車の第一便以降、続々と出発。このCLBの新展開は16年には「中欧班列」(CRE)と命名された。
「一帯一路」構想
13年9月「一帯」(シルクロード経済ベルト)がカザフスタンで、10月に「一路」(21世紀海上シルクロード)がインドネシアで提唱された。対象は人口約44億人(世界の63%)、経済規模約23兆ドル(世界の約29%)。目指すは東アジア・欧州の二大経済圏をつなぐ陸上・海上の大通路建設と沿線各国の経済支援。
一帯一路10年の成果
グローバルなコンテナリゼーションの発展、ユーラシア横断鉄道コンテナ輸送のグレードアップ、国際複合輸送上の新サプライチェーンの構築、東アジアの巨大国際物流ネットワークインフラの形成などに貢献し、東アジア複合輸送共同体構築への道を開いた。
中欧班列はコンテナ数1000TEUで始まって12年、昨年は160万超、1600倍に急成長した。中欧班列の成長は東西を結ぶ有益な輸送路を次世代に残すことになり、コロナ禍と相まって、将来的なコンテナ輸送の持続可能性追求のための国際協力の必要性をユーラシア諸国に認識させることになった。
未来への展望
東アジアが国際複合輸送共同体を構築し、中央アジア諸国と協力して、中央アジアを介したRCEPエリアとEUエリアの連携を展開していければ、中欧班列は東アジアと欧州間物流を支える安定したサプライチェーン、ユーラシア大陸の経済を支えるバリューチェーンへと成長できるであろう。
「債務の罠」が叫ばれるが、海運はビジネス、必要な物は作る。日本企業も他国でしていること。これを認識しないと見誤ると指摘。
資料などについては jckouryu@c07.itscom. net まで。
(神奈川県日中友好協会 経済文化交流部会 小松 碧)