「老壮青」と“老中青”、意味は同じ?
先月号で人間の一生のいろいろな年齢の言い方を述べた。そのほかにも、成長の段階によって様々な言い方があり、子供から老人までの各段階は幼年、少年、青年、中年、老年などに分けられる。
幼年期の子供は、嬰児、乳児、幼児などに分ける言い方があり、乳児はお乳を飲む時期で、児童福祉法では満1歳以下、嬰児は生後3年くらいまで、幼児は満1歳から学齢までの子供を言う。少年期と青年期は、その年齢特有の成長段階にある人間のことを言う。
中年期という言い方は微妙で、さらに分けて使うことはない。老年期は、初老、中老、高齢などに分けることができ、初老は40歳の異称と言われるように、昔40歳は既に老齢に入る時期だった。中老は50代で、その上の段階の人は一概に高齢で片づけられる。しかし、人生百年という今の時世では、60歳になっても働き盛りなので、とても老人扱いには抵抗があろう。
医療制度の面で、前期高齢者、後期高齢者という言い方もあるが、後期高齢者はどうも不評のようだ。中国語では、乳児、初老、中老に当たる言い方はなく、そして少し前までは、30~40代のことを“壮年”と言った。
「壮年」か「中年」か
日本語の青年、中年、老年は、中国語ではもともと“青年、壮年、老年”と言った。そして、“中年”という言葉自身は古いけれど、人間の一生の一つの区切りとしての使い方はどうも新しいらしい。中国の著名な小説『四世同堂』(老舎)の中では、“幼年、少年”に対して“壮年”という言い方はあるが、“中年”は“中年人”のほか、“中年妇女”「中年婦人」など連体修飾語としてしか使われていなかった。『人到中年』(1980年・諶容)という小説が出るまでは恐らく名詞としての使い方はなかったと記憶している。
壮年は、働き盛りの年頃で、昔は30~40代を言っていた。現代では50~60代でも働き盛りなので、壮年とも言えようか。それに対して、中年は青年と老年の中間という意味なので、両者は意味的に少し違いはあるが、中国では、“壮年”よりも“中年”の方が優勢である。そして、この3つの世代をひっくるめて“老中青”という言い方をしている。
しかし、日本ではむしろ古くからの「老壮青」が使われている。去る9月に安倍再改造内閣ができた際の安倍首相の発言に「老壮青」という使い方があった。伝統にのっとった使い方である。
(しょく・さんぎ 東洋大学教授)