次第は異なるが

2024年3月1日号 /

日中の卒業式について

3月は日本では卒業シーズンで、大学を始め、小中学校などでも卒業式が挙行される。今回は日中の卒業式についてお話ししよう。

「卒業」という言葉は中国語では“毕业”(「畢業」、「畢」は「終わる」の意、現代日本語では「畢竟」「畢生」などの熟語の中にしか用いられないようである)という。「卒業」の場合の「卒」も同義であるから、日中では用字こそ異なるが、意味は同じなのである。そして「卒業式」は中国語では“毕业典礼”という。

卒業式の式次第は、洋の東西を問わず大体似ているだろうが、日中間ではやはり相違がある。大学を例に話すことにする。

中国の学年は9月から始まるので、卒業式は6月~7月の間に行われる。母校の北京外国語大学の2023年度卒業式は、記事によると、6月27日に学長を始め大学の役職にある関係者の出席のもとで開催された。学長の“致辞”(挨拶)を皮切りに、来賓としての著名なる先輩の同窓生の“致辞”の後、教師代表、それから卒業する学部生、大学院生、並びに留学生の代表が相次いで“致辞”し、そして卒業証書などの授与、最後には各種の表彰が行われるという次第だった。これは中国のポピュラーな卒業式だろう。

日本の卒業式

日本の卒業式は、勤めていた東洋大学を例にしよう。東洋大学の卒業式は通例、3月25日に行われる。

日本の大学の卒業式は大学の経営方式によって違うが、私立大学である東洋大学では、学長を始めとする教職関係者以外に、大学の経営関係の理事会のメンバーも出席する。式典は大学歌斉唱から始まり、まず卒業証書、学位記授与が行われ、その後「学長告辞」「理事長祝辞」、在学生代表の「送辞」、卒業生の「答辞」が行われる。その後、各種の表彰が行われ、定年退職の教職員の紹介も行われる。大学歌斉唱、定年退職の教職員の紹介は別として、中国との典型的な相違は、平等を求めた中国の挨拶は全部“致辞”となっているが、日本では、教育者としての「告辞」、経営者としての「祝辞」、更に在学生の「送辞」と卒業生の「答辞」など、立場による挨拶の相違である。用語の細分化は意味の厳密化に繋がるので、言語研究を仕事とする筆者には、日本の言い方のほうが味があるように感じられる。

中国でも、卒業式では在学生が挨拶するのが定番のはずだが、上記の北京外国語大学の関係記事では読み取れなかっただけかもしれない。それから、日本の卒業式では個人としての先輩同窓生の挨拶はないようだが、同窓会代表の挨拶などはある。また、保護者が出席する場合、保護者の挨拶は「謝辞」となっている。

式次第は相違があるにせよ、卒業生達が輝かしい未来を持つよう、という祝福の願いが込められていることには違いがないはずである。

(しょく・さんぎ 東洋大学元教授)