梅の花の話
2月上旬にも近くの梅園の梅は花をつけ、今は咲き誇っている。昔の陰暦の3月なら桃の花が咲き、桃の節句を迎える。しかし、今の日本では公暦の3月はまだ桃の季節ではなく、梅の時期である。
梅は寒さに強く、長い冬ごもりの間に明るい色を楽しませてくれるので昔から「歳寒三友」の一つとして重宝されてきた(本誌2014年3月1日号連載52回目、「中国では『歳寒三友』と言って誰もがわかる――松竹梅」を参照)。しかし、寒さに強いと言っても、実際その花が冬の間に咲いているだけで、梅の木は寒さに強いわけではない。現実、冬は寒くて乾燥する中国の北方では梅の木は山野に生えるものがない。南方は別として、おそらく昔北方で暮らす皇帝や官僚、文人達が鑑賞していたのは室内で育てる盆栽であって、屋外に生えるものではなかったろう。
自生の花は別として、温室内の花もそれなりに人々を楽しませ、梅は多くの人に愛されてきた。それがさらに絵画の題材になり、掛け軸や屏風に描かれている。梅の花の種類も多いが、最もよく知られているのは、紅梅と白梅であろう。近くの梅園の梅はピンクに近い色である。
子供の時代には、梅の話は聞くが、山西省には梅の木はなく、温室栽培もなかったので、実物を見ることがなかった。大学に上がり、北京に行ったときに初めて植物園の温室で梅の花を見たが、盆栽だった。そして本物の梅の木を見るのは、日本留学を待たなければならなかった。
ロウバイって何?
梅はバラ科サクラ属の落葉樹で日本人には昔から親しまれている木だが、同じく梅という漢字を使ったロウバイ(蝋梅)は皆さまには疎い存在であろう。
蝋梅は、昔から中国人は梅類と考えているが、実際、クスノキ目ロウバイ科ロウバイ属の落葉樹である。その花は字面通り、蝋の色(今皆さまが知っている蝋燭の色は白に近いものが多いが、養蜂の人々が知る蜂蜜と同時に取れる蝋は黄色がかっている)をしていて、半透明で非常に可憐な花である。1月の下旬から、近くの家の庭に確認できるが、いつか秩父の山間で見かけた蝋梅は、木が大きく、ふくよかな花をいっぱい咲かせていたので非常に印象に残っている。
蝋梅の蝋の漢字は虫へんだが、多くの人は冬の間に咲くので陰暦の12月の別称の臘月の臘と勘違いをして、この臘の字を使って「臘梅」としたりする。いとこに「臘梅」という名前を持つ姉がいる。
今頃、日本では梅の花見の時期で、中国の北方では杏(あんず)である。周りの花を思いっきり観賞し、自然の恵みをこれからも大切にしていきたい。
(しょく・さんぎ 東洋大学元教授)