新年の挨拶
時計は2022年の到来を告げ、世界は新しい1年に入った。新年に当たり、新年の挨拶はなされるが、国によってそのされ方が違う。今回は、中日間の相違について簡単にお話しすることにしよう。
新年の挨拶といっても、前年の暮れあたりからも新年への挨拶が交わされる。まだ新年になっていないので、論理的には事前の挨拶であるから、新年になってからの挨拶とは違うはずである。日本語では、例えば、年の暮れなどに交わされる挨拶言葉は、「どうぞ、良い年をお迎えください。」が普通である。中国語でも、元日には“新年快乐!”(「新年快楽」、“快乐”は「快楽」のことで、字面の意味で理解すればいい)とされるが、新年が来る前は、やはり「予め祝う」という意味の語“预祝”を添えて、“预祝新年快乐!”とするのが標準的な挨拶である。しかし、やはり“预祝”のような語が入ると、どうもストレートさが薄れてしまうせいか、多くの場合、その“预祝”が端折られて、直接“新年快乐!”と言ったりする。それで、大晦日の日などに、同僚やクラスメートなどと分かれる際に交わされる挨拶は、“新年快乐!”または“祝新年快乐!”でよい。
「謹賀新年」は書面語
さて、いざ元日になって、どう挨拶をするのか。初めて日本留学に来た時、元日の朝、留学生寮の寮長に、ある友達が気を付けして、頭を下げながら大きな声で「謹賀新年!」と挨拶した。まだ発音が上手でなく、「きんが」は「ケンカ」のようで、「しんねん」も中国語的に「シンニエン」のようになっていたので、寮長は最初の一瞬その友達が何を言っているのか、少し戸惑う顔をしたが、さすがに留学生と長く付き合った経験もあるらしく、すぐに「あけましておめでとうございます」と挨拶を返してくれた。友達は、なぜ寮長が戸惑う表情をしたのか分からなかったらしく後にその事を話していたが、私たちが習っていた教科書にある年賀状の書き方に「謹賀新年」が載っていたからだっただろう。
この「謹賀新年!」とともに、年の暮れに、「あけまして」などと挨拶する中国人日本語学習者もよく見かけられる。中国語でも文体や場の相違はあるが、一般的な新年の挨拶の“新年快乐!”などは特にその相違がない。
心から皆様に、新年のご挨拶を申し上げます。
“祝大家新年快乐!”
(しょく・さんぎ 東洋大学元教授)