数えきれないほど、多種多様な餃子
2014年2月号では、中日の正月について書いた。今回は中国の正月には欠かせない餃子について述べたいと思う。
「西安餃子宴」などでも知られるように、餃子の種類は数え切れない。皮の材料は昔の家庭料理では小麦粉一辺倒だったのが、今は米粉、そば粉、大豆粉、燕麦粉などもある。だが、餃子の味は具で決まると言っても過言ではない。日本の中華料理店では、キャベツや白菜をベースに、ニラや豚肉、エビなどを練り込んだ餃子が主流だ。
しかし、北京の餃子専門店などでは、日本ではお目にかかれない餃子はいくらでもある。キャベツ、ネギ、ニラといったポピュラーな野菜のほか、香菜、茴香、ホウレンソウ、セリなどの葉野菜や、大根、ニンジン、搾菜など根茎を使ったもの。キュウリや冬瓜、ズッキーニなどの瓜類、また作り方は難しいがトマトを使った餃子もある。
野菜だけの餃子は、今は精進料理として尊ばれるが、たいてい味が薄く、結局肉や魚類を加えて濃い味を出している。肉類は、豚肉が定番だが、羊肉も回民族などを含む多くの中国人の選択肢の一つである。昔は役畜に使われた牛の肉は固いためにあまり好まれていなかったが、食用牛のお陰で牛肉の餃子もおいしくなってきた。魚や海老・蟹の餃子も人気が高い。
一家団欒の助っ人
食料の少なかった少年時代、お肉の入った餃子はお正月にならないと食べることができず、普段はニンジンや大根の餃子をよく食べた。ニンジンや大根を粗めにおろし、ネギなどの薬味を入れて油で炒めていく。少量の油でよくかき混ぜながらじっくり炒めていくのだが、具があまり柔らかくなりすぎないよう気をつけながら、塩などの調味料で味を整える。出来上がったら包むのだが、一家総出の餃子づくりは家族的な雰囲気を十分に醸し出すものである。ちなみに、ニンジンなどは油で調理すると栄養が吸収しやすいと言われているが、昔の人の知恵の豊かさには脱帽する。
昔のお正月は、よそで働く出稼ぎや勤め人もみんな田舎に戻り、餃子の食卓を囲んで一家団欒を楽しみながらお正月を迎えていた。しかし、今では、厳しい仕事などに追われて実家に帰れない人なども多く、さらには、海外旅行に出かけるなど正月の過ごし方も多様化してきている。それでも昔のような、餃子の食卓を囲みながらお正月を過ごすシーンが頭の奥深いところに焼き付いている。
(しょく・さんぎ 東洋大学教授)