日中友好協会の派遣で南京大学に留学しております佐野聡と申します。
12月13日は2014年、全人代によって正式に南京大虐殺の「国家公祭日」(National Memorial Day)と定められた日です。昨年11月に大虐殺記念館を訪れた際、展示の最後で「公祭日」のことが紹介されており、そのとき初めて私は「公祭日」の存在を知りました。ただ、記念館をあとにしてから、12月13日という明確な日付は私の脳裏から忘れ去られてしまいました。
しばらくしたある日、いつものように朝、江蘇省のラジオをつけてみると、パーソナリティの話すトーンが妙に厳粛で、よくよく内容を聴いてみると、その日が「公祭日」であることに気づきました。何やら、午前10時になったら車を路肩に停めてくださいだの、1分間の黙祷がありますだの、そういったような内容だったと思います。当日の午前10時、私は宿舎にいたのですが、時計が10時ちょうどを指すとともに、なんと!?サイレンの音が鳴り響いてきました。サイレンの音とともに黙祷するのが中国流のようで、そこが日本と違って興味深かったです。(厳密には「黙祷」とは言えないような気がしますが…。ちなみに中国語では「黙哀」と言っていました。)
かくして12月13日を経験した私ですが、過ごしてみると普段とさして変わりない一日でした。語弊があるかもしれませんが、ちょうど私たち日本人が東日本大震災を3月11日と覚えているものの、(実際に震災に遭われた方は別として)当日はいつも通り生活するように、南京の一般庶民も普段と同じように一日を過ごしていたのだと思います。当日は、日本人だからといって、何か悪口言われたり、悪態つかれたりするようなことは一切ありませんでした。ましてや、反日デモのようなことは、起こる気配さえありませんでした。これは12月13日に限らず、私が南京に来て以来ずっと感じていることです。つまり、南京という、日本がかつて負の歴史を遺した場所だからといって、日本人が今なお悪い印象持たれているとかそういったことは全然なく、むしろ日本人だからということで好印象を持たれることさえあります。南京に来る前はいくらか戦々兢々としていた私ですが、南京に来てからは杞憂に終わりました。南京は別に恐いところでもなんでもありません。
こういったことは、頭ではわかっていたのですが、やはり現地に来てみて実際にその都市に浸ることで初めて実感になりました。日本と中国は隣国であることから、時に私たち日本人は“知識”で中国をわかったような気になります。しかし、実体験として“身を以て”中国のことを理解している人は、隣国同士の割に案外少ないのではないでしょうか。南京の人が日本人に対してどんな印象をもっているか、ということ一つとっても、やはり南京に来て実際に中国人と接したり、現地の雰囲気を肌で感じたりする中で初めてわかるものだと思います。みなさまも機会がありましたら、ぜひ南京にお立ち寄りください!