劉亜銘①

2024年もあっという間に半分が過ぎました。博士課程に入ってから、受講するコースが減り、研究テーマにかける時間が十分あると思いましたが、今まで二つのテーマで試行錯誤をしていたからか、思ったよりやることが多く、24時間では足りないと思う日々でした。

学習面

今年の春学期に、D1から並行して続けた研究を2つから1つに絞ることを決心し、原爆被爆者の記憶研究に集中しました。原爆研究の蓄積が膨大であり、新たな視点を見つけることはなかなか難しかったです。私の場合は、原爆研究に感情史研究のアプローチを用いることでオリジナリティを出そうと考えています。

修士の時にはじめて感情史研究にふれましたが、いくつかの先行研究を読んで、新鮮に感じた一方で、その視点への疑問と活用方法を考えるようになりました。「感情的」というように、個人性や主観性とネガティブなニュアンスを帯びる「感情」は、科学性を要求する歴史学研究の対象となることは稀でした。しかし、ここ20年に、史学だけでなく、社会学や政治学においても感情を対象に特化した研究が見られるようになりました。そこでは、個人の感情を自然物としてではなく、周囲の文化や慣習によって様式を固められた社会的産物とみなしています。集団によって文化慣習や思考様式が異なる場合があるため、自然災害や戦争のような出来事に対して、どのような感情がいかに湧き起こる/らないかも丁寧にたどる必要があります。

原爆被爆者の体験談や手記は数多く存在しますが、それを利用した研究は意外に多くないように思います。これからの計画としては、広島と長崎の原爆関連記念館や研究所を訪ね、自分の研究で扱う資料を探す一方、原爆研究関連の学会に参加し、先行研究者のゼミや授業に傍聴させてもらうようお願いしたいと考えています。

生活面

去年はフィールドワークや学会で出かける機会が多かったですが、今年は資料研究が中心でした。名古屋大学の近くに住んでいますが、この辺にはカフェが多くあります。今年はなかなか面白いお店に一軒出会えました。本山にある「星屑珈琲」ですが、「一人でしか入れない」というのがルールです。店長によると、平日遅くまで働いている人がゆっくりコーヒーを飲みながら一人の時間を過ごせるような場所を作ろうと思ったのがきっかけで、おひとり様専用のカフェを開いたそうです。なので、営業時間も朝一からではなく、夕方から深夜までと、独特なスケジュールとなっています。私も何回か訪れてみましたが、時間の流れを忘れさせてくれるような素敵な場所でした。コーヒーもすごくおいしいです。名古屋に来る機会があれば、ぜひ訪れてみてください。

田中祐介編『無数のひとりが紡ぐ歴史 日記文化から近現代日本を照射する』(文学通信、2022年)

感情史関連の本でおすすめの一冊。社会的な出来事にかかわった一人ひとりの思いや感情など繊細な部分を日記のような私文書を通してみせてくれます。

 

「群れない魂の止まり木」をコンセプトにしている星屑珈琲。時間を忘れて一人の時間に没頭できる場所です。名大の図書館よりも静かかもしれません(笑)。