魚霄②

いよいよ秋も深まり、日増しに寒いこの頃でございますが、先生たちはお元気で毎日をお過ごしのことと存じます。

10月から後期授業が始まり、研究面においては、少し変化がありますが、順調に進捗しております。以下、自分の研究や生活に関する近況を報告させていただきます。

 

研究面

過去一年間、詐害行為取消権に関する研究をさせていただいておりますが、最近、「詐害行為取消権制度の趣旨とその効果との関係に関する一考察」という具体的なテーマを決まりました。

このテーマについて論じる際に、問題意識を提起しなければならないと思います。当該制度の趣旨について、いわゆる責任財産の保全という前提として、取消債権者は債務者のすべての一般債権者の利益のために取消権を行使する必要があります。しかし、取消しの効果については、判例法理によれば、取消債権者が詐害行為取消権を行使する際に、詐害行為による逸出した財産が金銭その他の動産である場合、または、債務者への現物返還が困難であり価額償還の場合に、取消債権者自己に対する直接の引渡しを請求することができます。その後、取消債権者が自分の債務者に対する返還債務を受動債権として相殺をすることができます。それにより、取消債権者が債務者の他の一般債権者より、優先的に債権回収を実現することになります。

上記のように、いわゆる取消債権者の事実上の優先弁済を認めるのは、責任財産の保全という前提として「すべての債権者の利益のためその効力を生じる」という制度の趣旨に反するのではないかと指摘されています。具体的に言うと、例えば本旨弁済の場合には、先に債権回収を着手した者(受益者)が後に着手した者(取消債権者)に負けることになるので、その結果、債権回収を後に着手した者のみ利益を受けることができます。いわば「遅い者勝ち」という相当でない結果になります。

しかし、事実上の優先弁済を全く否定すると、取消債権者に対するインセンティブが奪われることになり、詐害行為取消権を行使する者が少なくなり、制度の活用を害する恐れがあるので、折衷的な案を考えなければならないです。

自分は、それらの問題を考える前に、「優先主義」と「平等主義」という大前提を明らかにする必要があると思います。それは、取消しの効果のみならず、取消しの範囲に対しても大切な問題だといっても過言ではありません。例えば、仮に「優先主義」という前提として詐害行為取消権制度を考えると、取消しの範囲を取消債権者の被保全債権の額に限定して、取消債権者への直接の引渡しを認めたうえ、相殺による事実上の優先弁済も認めるべきであり、当該制度の債権回収機能が重視されていると考えられます。

他方、「平等主義」を重視する場合には、取消しの範囲を限定せずに、相殺による事実上の優先弁済を否定して、債務者のすべての債権者の利益のため取消しの効力が生じます。当該制度の趣旨(責任財産の保全機能)が重視されていると考えられます。

これからの研究は、「優先主義」及び「平等主義」と当該制度の関係を中心として進んでいく予定です。

生活面

相変わらず、文献を集め自分の限りたくさんの資料を拝読して、報告を作成しております。充実している毎日を過ごしております。

余計な話になるかもしれませんが、この間に親知らずが出てきて、口内炎になってしまって顔まで腫れが広がっていました。一週間休ませて頂き、先生たちやお医者さんにたくさんお世話になりましたが、ひとりぼっちの留学生として本当に大変でした。皆さんはお元気ですか。