新たな一年に入り、この三ヶ月の間、私は修士論文の執筆に集中しました。さまざまなことを考え、いろんなことに挑戦しました。具体的には以下の通りです。
研究面
この三ヶ月の間、修士論文を書くために、私は資料を調べたり、文献を読み返したりしていました。私の修士論文は哲学者ハンナ・アーレントの理論を用い、ドイツの戦争責任問題を分析する内容となっております。努力をして書いたのですが、なかなか自分の納得いく仕上がりにはなりませんでした。特に第4章の、アーレントの罪と責任との構造についての議論は、まだ整理しきれていない部分が多く、ロジックが厳密でないところも多々ありました。うまく書けなかったことに対し、悔しさもありましたが、自身の不足なところを知り、今後はそれらを改善していきたいと考えております。
なぜ第4章をうまく書けなかったのか。一つ大きな問題は、具体的なものに囚われていることだと反省しました。大学時代は法律を勉強していたがゆえ、罪と責任についての議論をしようとすると、実践的な法構造に着眼し、分析を展開したくなります。それは一つの視座としては面白いと思うが、それを利用したらより独特な視点からの議論も可能かもしれないが、やはり哲学の議論をする時には、それらの具体的な知識に囚われてはいけないと思うようになりました。なぜなら、それらの知識の根底にはすでに何かしらの哲学が置かれ、構築されてきたわけだからです。そして、私が工夫すべきところは、その根底にあるものだと気づきました。
また、第4章を書いているうちに、アーレントの理論だけでは物足りないとも感じました。思考の引き金と結論を彼女の理論からは見つけられるが、ロジックの繋がりを示す内容が足りませんでした。書けば書くほど、もっとほかの思想をも知りたいと思うようになりました。
今回修士論文を書く経験から、得るものがたくさんありました。一体なんのために書いているのかを何度も自問しました。人の役に立つものを書くためには、役立つとは一体何なのかについて考えなければなりません。また、もしいつか、周りの人が私の主張に反対する時、私は自分の考えを貫くことができるのだろうか、そもそも私は一体どんな考えを持っているのか、どんな立場をとっているのか、といったような自分に問いかけ、自身を顧みるきっかけを、修論の執筆は私にくれました。とても良い経験となりました。
修論以外にも、1月に私は哲学ゼミナールで、アーレントの責任論の限界をテーマに発表をしました。研究室の人だけでなく、他の大学の方からも意見をいただいて、とても貴重な経験となりました。
生活面
12月に友人が家に来て、一緒にクリスマスと新年を祝いました。年末に、近所のおばあさんが私におせちを分けてくださって、とても美味しくて、食べたら暖かい気持ちになりました。修論のネイティヴチェックをしてくださった研究室の先輩から、いろんな助言をいただいて、大変勉強になりました。すべてを含めて、私は感謝の気持ちでいっぱいです。
大学の勉学以外にも、私はいろんなことに挑戦しました。去年10月末に韓国語能力試験に参加し、無事合格できました。また、日本文学所属の友人と日本の小説と哲学書を一緒に読み、感想を語り合ったりしていました。とても充実した毎日を送りました。
これからについて
今年は、3月に博士前期課程を卒業し、4月に後期課程に進学する予定です。今は進学に向けて、院試の準備をしております。
この一年間は、日中友好協会のご支援のおかげで、経済面の負担が減り、大変助かりました。東京でいろんなお手続きをしてくださった方々にも、大阪日中友好協会で面会をし、たくさんのことを教えてくださった方々にも、同じく奨学生としてのほかの二方にも、とても感謝しております。ありがとうございました。今後も、引きつづき努力をし、自分のできることをしていきたいと思います。