会報『日本と中国』

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友好訪問詳細

友好訪問「伝統を大事にしながら、新しいものも取り入れる。囲碁の幅を広げたい」

2016年10月1日号
團 宏明(だん ひろあき)さん
公益財団法人日本棋院理事長
團 宏明(だん ひろあき)さん

1947年長崎県生まれ。69年東京大学法学部を卒業し、同年郵政省に入省。総務省大臣官房長(2001年)、日本郵便公社副総裁(03年)を経て、07年に郵便事業株式会社社長に。15年日本棋院副理事長を経て、今年6月から現職。(公財)通信文化協会理事長

6月に日本棋院の新たな舵取り役に就任

 囲碁棋士を育成し、普及活動を進める日本棋院の理事長に今年6月、就任した。

 人気囲碁漫画や井山裕太棋聖の7冠達成、プロ棋士に圧勝したAI(人工知能)の登場など、近年囲碁への関心は高まりつつある。時代の変化をとらえつつ、愛好家のニーズにどう対応していくか。重要な時期にかじ取りを任された。

「普及」「事業」「棋力向上」を柱に活動展開

 長崎県出身。囲碁は高校時代に友人に教えてもらい始めた。大学卒業後は郵政省へ就職した。「職場でも囲碁が盛んだった」。趣味として続けた。「白と黒しかない単純さに反して、奥が深い。碁石に互いの主張が込められ、それを認め合い、尊重し合うのが囲碁の良さ。面白さだと思う」

 日本棋院は、「普及」「事業」「棋力向上」の3本を柱に活動を展開している。

 新たな取り組みでは、現在全国27の大学で初心者向けの囲碁講義を実施中。派遣したプロ棋士が指導している。「学生に人気があり、単位もつく。“教養”としての囲碁が認められた証拠。うれしい限り」

 また小中高等学校との連携も深め、約200校が囲碁の授業を行う(放課後を含む)。「老若男女を問わず、囲碁を知らない人にまずやってもらう。それが日本棋院の使命」。囲碁人口が高齢化する中、裾野を広げる新事業は急務だ。「2020年東京五輪に向けて、幅広い層が参加できる囲碁イベントを準備していく」

 7世紀頃に中国から日本に伝わったとされる囲碁は、長い日中交流の歴史で度々懸け橋に。「私の故郷、長崎も中国とのつながりが深い。国と国との民間交流、特に自治体同士の交流は大事」。プロを含め日中間の囲碁交流は日本囲碁界の「棋力向上につながる」とし、各地の日中友好協会が行う友好都市間の囲碁交流事業にも期待を寄せる。

愛好家の「囲碁生活」を豊かにしたい

 「世界で活躍できるトップ棋士を育てたい」。現在、国際囲碁連盟には76の国・地域が加盟。国際化が進む。日本囲碁界は国内大会が充実する半面、世界戦が組みにくい現状があると指摘。経験値やハングリー精神で優勢な中国や韓国のプロ棋士に勝てる棋士の育成にも目を向け改善策を模索する。「世界戦の雰囲気は国内戦と違う。『棋風』も変わり刺激にもなる。若手も含めて経験を積める機会をもっと増やしてあげたい」

 最近はインターネットで囲碁を楽しむ人も増えた。運営する「幽玄の間」に加入すればネット上で世界中の愛好家と対局できるが、「顔を合わせたリアルな対局が大切」。囲碁本来の魅力を重視する姿勢に変わりはない。「伝統を大事にしながら新しいものも取り入れる。変えるのではなく、囲碁の幅を広げたい。ニーズがあれば対応し、いろいろな愛好家の囲碁生活を豊かにしたい」
(北澤竜英)