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友好訪問詳細

友好訪問「日本で考案された“木(モク)リト”が中国の大地で根付いています」

2016年8月1日号
澤岡 泰子(さわおか やすこ)さん
版画家
澤岡 泰子(さわおか やすこ)さん

立製作所の中央デザイン研究所に勤務し家庭用電気製品のデザインに従事、その後、パナソニックで最初の女性工業デザイナーとして活躍後に独立。現在は版画家として中国をはじめ世界で活躍

中国人学生に木のリトグラフの魅力を伝える

 小学4年から中学2年まで、開放性の肺結核にかかり学校へ行けなかった。部屋にあった枕草子などをひたすら読む一方、たくさんの紙に、ただただいたずら書きをして過ごす。高校の美術部から女子美術大学へ。卒業後は大手企業に就職し商品デザインを担当した。

 その後、フリーに転向。絵を書く一方、6畳の部屋でできる金属レリーフを始め、木のリトグラフ(版画の一種)に出会う。「これは面白いと思い、始めました」。「木(モク)リト」の始まりだ。その作品の成果は、ポーランドやイタリア、そしてメキシコなどでの展覧会に繋がった。

木リトに驚いた中国の先生たち

 澤岡さんの木リト作品は、病院や児童相談所などいろんな所に飾られている。それを見た中国人の化学の先生から「中国で講演してほしい」と言われ2012年3月、広東省潮州市の韓山師範学院美術学部の大教室で講演。100人以上の先生や学生が詰めかけ立錐の余地もなかった。

 初めて木リトを見る学生たちからも「どうして木リトが始まったのか」などの質問が殺到。翌年3月には現地で学生たちに教えた。

 「中国の学生はものすごく好奇心旺盛で、原宿で何が売られているかなど、たくさん情報を持っている。しかし木リトは知らず、ぜひやりたい」と言う。

 そして正味4日間の授業を行った。「学生たちは、刷りとりが非常に良く、足刷りやバレンで作品が作れ、同じ版に絵を描き彫ることもできることなどを理解し、良い木リトを作ることができました」

中国人学生の展覧会開催へ

 翌2014年も授業を行った。その時は広州美術大学大学院の卒業生や教員も参加。11年の最初の打ち合わせから3年。「やっと木リトが中国の大地に根付いたことを確信しました」

 その後、中国の学生たちの作品は東京や神奈川の画廊、愛媛大学の美術館を巡回。政府レベルの日中関係が今ひとつ進展しない中、ある経済人から「政治家にも経済人にもできないことをアーティストはできる。それも日本で考案された新しい技法だからぜひ頑張ってください」と激励された。

 今回、広東省韓山師範学院大学の学生たちの木のリトグラフ展が東京で開催される。学生の作品44点、自身を含む日本人教員らの作品を含めて計60点が展示される。

 「中国から伝わった木版画が、日本で考案された新しい技法に出会い生まれた木のリトグラフ“モクリト”。それが中国で花開きつつあります。ぜひ多くの日本人に見てほしい」
(大類善啓)