会報『日本と中国』

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友好訪問詳細

友好訪問「中国人と同じように話せて聞ける“中国を読める人”を育てたい」

2016年2月1日号
張 偉雄(ちょう いゆう)さん
札幌大学孔子学院学院長 札幌大学地域共創学群文化学系教授
張 偉雄(ちょう いゆう)さん

広東省の出身。広州外国語学院日本語科卒業、1986年に来日、東京大学総合文化研究科比較文学比較文化専攻修士博士課程修了。博士(学術)。98年に札幌大学へ就職、現在に至る。この間、ロンドン大学客員研究員、広東外語外貿大学および天津外国語大学の客員教授を歴任。著書に『文人外交官の明治日本』『比較文学考』

今年で10周年を迎える札幌大学孔子学院の院長

 来日して29年、札幌に来て20年近くになる。中国語や日中比較文化論を札幌大学で教える傍ら、今年で10周年を迎える同大孔子学院の院長を設立当初から務める。

 日本社会に溶け込んだからこそ分かる独自の視点で問題意識を持ち続け、友好のために中国文化を発信する毎日だ。

高校生から日本語学び1986年に来日し29年

 広東省出身。日中両国が国交正常化した1972年当時は高校生だった。友好ムードが高まる中、「日本語を話せる人材を高校生から育てよう」と国が動き出すと、文化大革命の影響で休校中だった地元広州市の外国語学校が再開した。

 「当時は全てが計画経済でした」。学生の成長も国家の発展を担うと重視された時代。入学して日本語を学び始めたのが人生の転機となった。その後は広州外国語学院(現広東外語外貿大学)で本格的に日本語を磨き、卒業後は教員としても勤めた。さらなる高みを目指し、日本政府の奨学金を受け東京大学へ留学した。

 8年間の東大留学を経たのちに98年に札幌大学へ就職。中国語のエキスパート育成のために全力を傾けている。同大は3年前に短期・交換留学を通じて通訳や翻訳の技術を学べる中国語専門コースを新設。今ではスタッフ陣の中核を担う。

地域に根ざした活動で“出前講座”も行う

 近年、中国人観光客でにぎわう北海道だが、気になることがあるという。

 「ホテルやお店で中国語の需要が高まっている。しかし、中国語が堪能な日本人は少なく、留学生が重宝されているのが現状です。悪いことではないが、日本人がしっかり中国語を学び、日本人の立場で日本について紹介する方がいい」

 “爆買い”現象が起こる要因の一つとして、中国語が堪能な日本人ガイドの不足を指摘する。特定の商品やブランドに人気が殺到するのは、観光客が知り得た情報に偏りがあるからではないか、と考えているからだ。「言葉の力を軽く見てはいけません」。29年間の在日生活で導き出された一つの答えでもある。

 「日本人と同じように、日本語を話せて聞ける中国人。中国人と同じように、中国語を話せて聞ける日本人。そうした相手の国を“読める人”は、中日関係が良くない時でも冷静な判断ができる。相手と一緒に考えることもできます」

 現在、300人超の社会人が通う札大孔子学院は地域に根ざした活動を広げて中国文化を伝えている。道内の友好団体との共催事業も多く、北海道日中友好協会とも連携は密だ。10年間で基盤は固まってきた。最近は、講師を各地へ派遣する“出前講座”が好評だという。「道内どこへでも行きますよ」。一人でも多くの“中国を読める人”を育てるのが目標だ。
(北澤竜英)