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友好訪問詳細

友好訪問「和歌や俳句を漢訳することで日本への内面的理解を促せる」

2015年4月1日号
西安交通大学教授 文学博士、翻訳・作詞家 金 中(きん ちゅう)さん
西安交通大学教授 文学博士、翻訳・作詞家
金 中(きん ちゅう)さん

1975年西安生まれ。幼少の頃から漢詩に親しむ。14歳で西安交通大学日本語科に入学(飛び級)、93年卒業。95年から11年間日本に留学し東京外国語大学で和歌を学ぶ、文学博士。また、9歳で始めた囲碁の腕前はプロ並み。97年関東学生囲碁選手権で優勝。同年、武宮正樹プロ九段らと記念対局も経験。全日本漢詩連盟駐中国代表、和歌文学会会員。著書に『詩詞創作原理』『現代詩詞評論』『金中博士留日詩詞集』など

西安で日中詩歌の交流活動を行う大学教授

 西安交通大学で日本語と日本文学史を教える傍ら、学生に日本の和歌や俳句を紹介している。

 「中国では、日本が独特の伝統文化、立派な詩歌作品を持っていることが広く知られていません」

 日本文化を理解するうえで、詩歌を伝えることは不可欠だという。尽きない探究心と、こうした思いを著書『日本詩歌翻訳論』にこめて、昨年に出版した。

 日中詩歌の交流史を振り返り、日本人が漢詩を好んで読むなどといった、ほぼ「一方通行」だと気づいた。

 「日本の和歌や俳句には、日本人の民族性や美意識などが集約されています」

 そこで考えたのが和歌や俳句の漢訳。「中国の日本に対する内面的な理解を促せる」と思った。「効果は緩慢ですが、今後確実に現れる」と期待している。

1歳で漢詩を暗誦囲碁を通じて初訪日

 古都・西安で生まれた。中国では古くから家庭教育の一環として、子どもに漢詩を暗記させる風習があるが、1歳から漢詩の暗誦(あんしょう)を始め、8歳で「西安市青少年唐詩演誦大会」で優勝した。「飛び級」制度により小中高は7年で修了、大学に進学したのは14歳と早い。中国政府からは「中国好少年」(各分野で業績をあげた14歳以下の名誉称号)の称号をもらった。

 大学では日本語を専攻。日本語を選んだのは、9歳から打ち始めた囲碁の影響だ。「当時、日本は世界一囲碁が強かった」。囲碁を打つことで日本に興味を持ったのがきっかけだった。

 大学に入る前、船橋市囲碁代表団(千葉県)が西安を訪れ対抗戦を行った。日本人とふれ合ったのはこれが初めて。大学2年の15歳の時、今度は西安市囲碁代表団の一員として船橋市へ。「初めての日本でした。先進ぶりに驚き、この時に日本留学を決心しました」

留学時代は協会員に漢詩の面白さ伝える

 大学卒業後の95年、東京外国語大学に留学し、古典和歌を専攻。このころから漢詩の創作にも取り組む。

 「和歌、俳句は『日本の精神』を中国に伝える絶好の媒介で、中日交流の懸け橋になり得るものです」

 大学で和歌を学びながら日中文化交流活動にも積極的に参加。NPO東京都日中友好協会主催の「金中漢詩朗誦会」などで漢詩の面白さを協会員に伝えた。

 11年間の留学生活を終えて2006年に帰国。現在は漢詩や和歌を通じて、日中友好の思いを西安から発信し続けている。

 「優れた文学作品を通じて、その国の文化や国そのものに興味や好感を持つようになるケースは多い。文学交流は中日両国民の相互理解に役立ちます」
(北澤竜英)