会報『日本と中国』

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友好訪問詳細

友好訪問「料理を褒めるようにお互いを尊重し合えば日本と中国も仲良くやっていける」

2013年12月1日号
料理人 四川飯店代表取締役社長 陳建一(ちん けんいち)さん
料理人 四川飯店代表取締役社長
陳建一(ちん けんいち)さん

1956年1月5日、東京生まれ。子の建太郎も料理人。東京中華学校、玉川大学卒業後、父建民の下で修業を開始。90年、父の後を継ぎ赤坂四川飯店社長に就任。現在、グループオーナーシェフとして後進の指導にあたる。趣味は料理を作ること・食べること、ゴルフ

四川料理の普及活動に努め黄綬褒章を受章した

 今年11月、特定の分野で功績のあった人に贈られる黄綬褒章を受章した。「父の精神を受け継いでコツコツとやってきたことが認められたんだと思う。『おいしい!』と喜んで食べてくれるファンたちがいたからこそ」

 2年前に公益社団法人日本中国料理協会の会長に就任。同協会で中国料理の全国コンクールを主催したり、日中の優秀な料理人を相互に派遣して交流させたりするなど、中国料理の普及活動に努める。「そのことも、今回のタイミングでの受章の理由かもしれない」と謙虚に話す。

 父は、四川省から移り住み、日本にマーボー豆腐やエビチリ、ホイコーローといった四川料理を広め「四川料理の神様」と呼ばれた陳建民。料理によるおもてなしの精神は、多くのファンの支持を得ている。それだけでなく、料理学校を設立したり、料理人同士の交流を促進するなど、中国と日本の料理を通じた懸け橋を作った。そんな父の姿を見て、料理人を志すことを決意した。

おもてなしの精神で常に自分を戒める

 料理の腕前は言うまでもない。父の下で修業を積み、90年代の人気番組「料理の鉄人」では「中華の鉄人」と称された。

 料理中は常に、作る自分と食べる自分の2人がいると思っている。「技術も大切だけど、料理するのは結局は人間。おいしくなさそうな料理を、もう1人の自分が食べたいと思うわけがないでしょ?そんな料理をお客様に提供してはダメ」と、おもてなしの精神も受け継いだ。

 調理場の弟子たちが、心を込めずマニュアルのように食材を切っているのを見ると「これを自分が食べたいと思うのか」と問いかける。一方で、自身もまだまだ修業中の身。「人間は忘れるし、ミスをする生き物だから、常に自分を戒める。初めてお客様に料理を出した時のドキドキ感、下げられた皿を見た時の『食べきってもらえた』という喜び、こうした気持ちは長年やっていると忘れてしまう」

 「人間だから、誰が食べても『おいしい』と喜ぶ完璧な料理なんて作れない。でも俺達はプロだ。だからとにかく一生懸命、誠心誠意作る。調理場に一歩足を踏み入れたら、そういう心構えで作らなければいけない」

料理を褒めるようにお互い尊重し合あおう

 昨今の冷え込む日中関係について「政治的には上手くいってないが、俺達がどうこう言ったところで良くなるわけじゃない。日本と中国は考え方や習慣、文化が違う。これらを一緒に捉えようとするからおかしなことになる」

 「それぞれの国に素晴らしい文化があり、やり方がある。料理の業界で例えれば、各国のシェフ同士とても仲が良く、お互い現地を訪問し交流する。『ああ、こういう料理もあるんだね』『おいしいね』とお互いの料理を褒め、喜び、学び合ってるから上手くいく。単純でしょ?そのように、日本と中国もお互いを本気で尊重し合えば、きっと仲良くやっていけると思うよ」

 「料理人はとても素晴らしい仕事。そしてお客様が喜んでくれるのが嬉しいんだよ」。初心を忘れるべからずという座右の銘“鮮心”を胸に、今日もお客の笑顔のために中華鍋を振るう。
(田島恵輔)