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友好訪問詳細

友好訪問「大事なのは“写し鏡”の関係。短所が長所として生かされ合う日中交流を」

2013年7月1日号
俳優 関口知宏(せきぐち ともひろ)さん
俳優
関口知宏(せきぐち ともひろ)さん

1972年7月1日、東京生まれ。㈱三桂所属。96年芸能界デビュー。ドラマや映画、CMなど多方面で活躍。2004年、NHK『列島縦断 鉄道12000キロの旅~最長片道切符でゆく42日~』を皮切りに、ドイツやイギリスも巡り、07年には初めての中国に挑戦した。以降、「国民的旅人」と呼ばれるほどに。鉄道の旅を絵日記でつづった著作も多数出している。12年、「日中国民交流友好年」親善大使に就任

「心の声」に押されて中国を鉄道で旅した

 中国とは意外な縁がある。デビュー前年の20代前半、夢で「イーガレンダシンション」とお告げのような声を聞いた。心に引っ掛かり、調べるとそれが「一個人の新しい人生」と「一個人の心の声」という2つの意味がある中国語だと知った。

 その後2004年、NHKから日本列島を鉄道で縦断する仕事の依頼を受けた。旅は嫌いだったが、「心の声」が「やります!」と即答したという。まさに「新しい人生」さながらに始まった旅は好評を得て、遂ついには中国全土を巡る旅(07年)へと展開してゆく。

 総距離3万6千㎞、様々な都市を鉄道で巡った。道中では人々のパワーに圧倒され、「あの熱烈な人懐っこさは、どこから湧いてくるんだ」と振り返る。以来、頭は拒んでいるのに「心の声」が欲する時は「やれってことなんだろ」と悟り、嫌なことでも挑むようになった。海外に出てこそ自分の国や自分自身が分かるという「異郷有悟(いきょうゆうご)」の言葉を創り、その信念を貫いた。

「日中友好」だけで終わらせたくない

 昨年、外務省の日中国交正常化40周年記念「日中国民交流友好年」の親善大使に就任、日本の高校生を連れ中国を旅した。テーマは「新たな出会い、心の絆」。あの“お告げ”に出た「新」と「心」の字が使われていたことに驚いた。

 「高校生に、中国人を異郷有悟、即(すなわ)ち“写し鏡”にし、自分の長所短所を感じてもらう」ことを心掛けた。「スタッフには変な演出をせず、中国の良い面、悪い面の両方を感じている彼らを映すようお願いした。それを見た視聴者が日本人の長所と短所、特に短所を自覚したら番組として成功ですね」

 「日本の短所は、仲が良いだけの“友好”で終わらせること。視聴者も制作側も往々に『友好的な作風に仕上げれば収まりが良い』と考える。でも、ちょっと良くないニュースが流れると『中国は厚かましい』とすぐ変わる。どっちなんだよって思う。大事なのは“写し鏡”の関係になること」。旅が導き出してくれた結論だという。

 日中の長所と短所を、日本が「楽(らく)」の気質、中国が「喜(き)」の気質と例える。長所は「日本のいわゆる『おもてなし(楽)』の精神に対し、中国は相手を“喜”ばせようとする」。一方で短所は「日本が、できるのに何もせず、楽しようとするのに対し、中国は、できないことをできると言って、歓喜を求めて動こうとする」と分析。「疲れて休みたい時に『絶景を見せたい』と、崖の上まで歩かされましたよ(笑)」と中国人の長所を語る。

政治と文化「関係ない」は“楽”

 日中摩擦で民間交流が途絶えると「政治と文化は関係ない」といった声が上がるが、その姿勢には異議を唱える。「政治と文化は関係がある!関係ないと考える方がまさに『楽』で、日本人の短所そのままになる。政治と文化のありようもギクシャクも、実は両国の国民性、気質から生じている。それを両国民が『一個人』として自覚し、覚悟をもって草の根交流をして初めて、両者の短所が長所として生かされ合う。そんな交流を作って欲しいですね」

 「偉そうなことを言えるのも、中国に関して素人だからなんですけどね。他人にこうした話をすると、引かれてます(笑)」と言いながらも、6月22日には横浜―上海友好都市提携40周年記念で講演し、中国での鉄道の旅について語った。無垢(むく)な心であったからこそ、ありのままに感じた中国を語れるのだろう。
(田島恵輔)