会報『日本と中国』

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プラットフォーム 西園寺 一晃 ― 工学院大学孔子学院長 北京大学客員教授 『警戒すべきトランプ現象と日中関係』

2017年2月1日号

年は世界で意外なことが幾つも起きた。英国のEU離脱は英国自身も想定外の出来事だったようだ。極めつけは米大統領選のトランプ勝利。暴言王と呼ばれるトランプは大統領に就任したが、世界の趨勢に逆行する言動が多い。
 冷戦終了後世界のグローバル化は時代の趨勢となった。物も人も情報も自由に行き来する方向に加速している。その中で先進国と発展途上国はどのような分業協調をし、共存共栄を図るかが今の課題だ。米国のような先進大国は世界の平和と発展に責任を持たねばならない。それを米国第一という名のもとに、米国の利益のみを考え、他の国、他の国の企業はどうでも良いというなら世界は乱れる。
 就任直後TPPからの離脱を表明し、NAFTAを事実上否定、経済的にはメキシコ、中国、日本を攻撃している。自由と民主主義を掲げてきた米国はどこに行ったのか。このままでは世界は、米国は分断される。自由貿易の中で生き、発展してきた日本や中国にとって由々しき問題だ。経済ばかりではない。沈静化しつつある東シナ海や南シナ海に敢えて波紋を立てるような言動、国際社会が認めている「1つの中国」を変更するような言動は取り返しのつかない緊張と紛争を生む可能性を秘める。怖いのはトランプ現象が世界に蔓延することだ。
 ヨーロッパでは排外主義的な極右勢力が跋扈しているが、トランプの登場で彼らがさらに勢いづく可能性がある。日中友好を願う我々が警戒しなければならないのは、トランプの米国がアジア太平洋で台頭する中国に対抗するため、コストのかかる自ら手を下すことはせず、日本を利用しようとすることだ。日中相争わせ、双方を消耗させることで漁夫の利を得る、これは最悪のシナリオだ。ただトランプの言うことがそのまま通じるような国際社会ではない。国連があり、WTOがあり、各種国際組織がある。グローバル化の時代は多文化共生、国際協調の時代だ。敢えて逆行するならトランプ大統領の退場が早まるだけだ。