会報『日本と中国』

トップページ > 会報『日本と中国』 > プラットフォーム一覧 > 2016年12月1日号 『トランプ氏当選…「悪夢」か「天祐」か?』

プラットフォーム詳細

プラットフォーム 橋本 逸男 ― (公社)日中友好協会副会長 外務省OB 元大使 前東北大学教授 『トランプ氏当選…「悪夢」か「天祐」か?』

2016年12月1日号

国が、時に驚愕すべき動きをすることは、外務省奉職時から自身も見聞してきたが、今回の米大統領選挙には恐れ入った。正直言って、心配、懸念は少なくない。
 「アメリカを再び強勢に」と訴えるが、米国の「偉大」さは、ただ「強い」だけではなく、理念、理想を追求する点にあったと思う。時に「変な」ことはしても、世界に関わり、理念を持って、進歩を追い求める姿勢が窺えた。ケネディの就任演説が、世界の人々に感動を齎したのは、正に、そうした姿勢が顕著に表れていたからであろう。
 米国が、内向きの、ただの「大国」になっては、寂しい。
 尤も、筆者の「心配」は、TPPや経済、貿易、米軍の駐留費などより、防衛や「同盟」関係を巡り、日本が「強大化」を指向し、近隣関係に緊張を齎すことである。
 日米安保体制は、日本の強大化をチェックする米国の思惑を秘め、防衛を堅固にしたい日本の希望に応え、また、米国の世界戦略の中で日本と在日基地を活用しようとする、外交・軍事(国防)上の「傑作」であった。米国が、そうした考えを後退させるなら、日本は自前の「努力」を強化せねば、という考えが、保守層には必ず生じて来よう。
 日本の防衛力は、実は、既に相当なものであるが、現在の世界情勢への認識を維持する限りは、米軍「退出」の「穴」を「埋める」という発想は、生じ易い。そうなれば、日本の防衛力増大が「目立つ」結果になり、アジアの一部の地域では「懸念」を増すことになりかねない。
 妄想を逞しくすれば、日本の「防衛力」低下をとらえ、日本与し易し、「奇貨居くべし」などと考える外部勢力が出ないよう、殊更に「防衛」強化を喧伝する向きが出て来たりはしないか。そういう人々にとっては、米軍の「退出」は「天祐」ですらあるかも知れない。
 新政権の発足は、我々に、米国の実像、日米関係の在り方、日中関係などを、自分の頭でしっかり考えることを迫るものになりそうである。